通信事業者が放送サービスへの進出を強めるのに伴い,CATV事業者も対抗上,ネット接続や電話サービスを強化する必要に迫られている。さらに,本業の放送サービスでも通信事業者に対抗するために取り組まねばならないことがある。周波数帯域の有効活用である(図1)。

図1●CATVと光RF方式の周波数利用比較<br>CATVは770MHzまでの帯域をアナログとデジタル放送で共用している。HDチャンネルやネットの高速化には,アナログ放送の停止が必要。光RF方式の場合は制約が少ない。
図1●CATVと光RF方式の周波数利用比較
CATVは770MHzまでの帯域をアナログとデジタル放送で共用している。HDチャンネルやネットの高速化には,アナログ放送の停止が必要。光RF方式の場合は制約が少ない。
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 幹線部分を光ファイバとし,ユーザー収容に近い部分に同軸ケーブルを使うHFC(hybrid fiber coax)方式のCATV網は,770MHz帯までの周波数帯に様々なサービスを重畳している。

 ここで課題になっているのがサービス内容を高度化するために,現行サービスの一部を停止して周波数を空けなくてはならないこと。空き帯域が不足しているのだ。

光対抗でアナログ停止を急ぐ

 例えば,BSデジタル放送のチャンネル数拡大や,現在SD画質(標準画質)で送出しているCS番組のハイビジョン化などに必要な帯域を捻出(ねんしゅつ)するのに苦労している。さらに,インターネット接続の高速化,VOD(ビデオ・オン・デマンド)のHD(ハイビジョン)対応など,様々なサービスを実現するために多くの周波数帯域が必要となってくる。

 ジュピターテレコム(J:COM)では,アナログ放送サービスの早期停止で,帯域を確保しようと考えている。既に,加入者の82%はデジタル放送サービスを利用中。2010年半ばには残りのユーザーにデジタル・サービスに移行してもらい,空いた帯域を有効活用しようと考えている。

 FTTHを使う光RF方式の場合は,1本の光ファイバで放送と通信の両サービスの波長を多重できる。放送波だけで2GHz帯までの広帯域を利用できる利点がある。例えば,CS110度デジタル放送「スカパー!e2」は2GHz帯近くの高い周波数を使う。光RF方式なら,これを周波数や変調方式を変えない「同一周波数パススルー」方式で再送信が可能となる。

 通信事業者のFTTHだけでなく,自治体が設置・運営するCATVサービスなどでも,末端まで光回線化し,パススルー伝送する例が出ている。技術的には,光ファイバーの広帯域を活用した方が今後のハイビジョン・チャンネルの増加への対応がしやすいからだ。

 とはいえ,CATV事業者が同軸ケーブルと光ファイバで構成する現在のHFC(hybrid fiber coax)インフラをすべてFTTH化するのには大きな投資が必要になる。提携局や事業エリアの狭い独立系の地方CATV事業者では,特に投資を回収しにくい構図がある。そこにFTTHインフラの構築で一日の長があるNTT東西との協力,という選択肢が浮上するのである。

 一方,傘下局の多いJ:COMのようなMSOには,NTT東西との競争を続ける体力がある。こうしたMSOが進出している都市部では,NTT以外の通信事業者との提携や,CATV事業者同士の協力といった形でトリプルプレイ市場の競争が継続する公算が高い。