生産性の向上を議論する時、今やIT(情報技術)の貢献を外して考えることはできない。1990年代半ば以降の米国における生産性向上とIT活用の相乗効果、いわゆる「ニューエコノミー」の進展は、これに乗り遅れた日本やEU(欧州連合)と米国との間に、IT投資の方法やIT活用環境の整備に大きな違いがあることを如実に物語っている。

 1995年以降は、米国ではIT投資の伸びに伴って労働生産性も大きく伸びている。1995年から2004年までの米国のIT投資は約3倍(GDP比3.3%)、日本は1.6倍(GDP比3.1%)である。そして労働生産性の伸びは、同期間で米国が30%程度に対し、日本は半分の約16%である。

 この差が生じた背景にはIT投資そのもののあり方だけでなく、IT活用と並行した業務プロセスの再構築(BPR)の推進や、プロセスとシステムの標準化や教育支援といった無形資産への投資での違いが大きい。米国のニューエコノミーは有形・無形資産へのバランスの良い投資に支えられており、オープンアーキテクチャーやインターネット技術を社会や産業の広範囲で活用し、継続的な発展につなげてきた。特に、オープンでチープ化したネットワークの利用効果は大きかった。