Windows Server 2008がリリースされたのはつい先日のことのように思えるが,Microsoftは既にその次版となるWindows Server 2008 R2のリリースの準備を着々と進めている。Windows Server 2008 R2は,メジャーなOSのあとにマイナーなR2をリリースするというWindows Server 2003で使用されたサイクルを踏襲している。Windows Server 2008 R2には,管理者が間違いなく気に入るであろう新しい管理機能が多数追加されている。Windows Server 2008 R2に数ある改良点の中から,特に優れたものベスト10を紹介しよう。

第10位●64ビット版のみのリリース:Windows Server OSの歴史上初めて,Windows Server 2008 R2は64ビット版のみの提供となる。つまり,Windows Server 2008 R2を使用するには,64ビットに対応したハードウエアが必須なのだ。現在出回っているほぼすべてのサーバー・ハードウエアはこの要件を満たしているものの,Windows Server 2008 R2は32ビットのシステムでは動作しない点は知っておきたい。

第9位●256コアのサポート:Windows Server 2008 R2では,拡張性の強化により,最大で256個のCPUコアを利用できるようになる。Windows Server 2008では最大で64コアまでしか対応していなかったことを考えると,これは大幅な進歩だ。

第8位●Core Parking:Windows Server 2008 R2の「Core Parking」は,電源管理を強化する新機能である。Core Parkingは,使用されていないコアについてはOSが停止させることで,それらのコアを動作させるのに必要な電力を節約する。Core Parkingによって停止されたコアは,ワークロードが増えた際に,数ミリ秒で動作を再開することが可能だ。

第7位●Remote Desktop Services:Windows Server 2008 R2では,Terminal Servicesが「Remote Desktop Services」という名称に変更された。ただし,変わったのは呼び名だけではない。新しいRemote Desktop Serviceには,Aero Glassインタフェースやマルチ・モニター,DirectX 11/10/9のサポートが追加されている。

第6位●新しいHyper-V:Windows Server 2008 R2には,新版の「Hyper-V」が含まれている。現在のWindows Server 2008に搭載されているのはプレリリース版のHyper-Vだったが,R2には最新版のHyper-Vが搭載される(編集部注:Windows Server 2008のユーザーはHyper-Vの製品版をダウンロードで入手して無償で利用可能)。この最新版では,最大64までの論理プロセッサをサポートする。また,TCPオフロードやジャンボ・フレームを使えることで,ネットワーキング・パフォーマンスも向上する。なお,Hyper-Vにおける最も重要な改善点の1つは,次に挙げるLive Migrationのサポートが追加されたことだ。

第5位●Live Migration:おそらくR2で最も期待されていた機能である「Live Migration」は,サービスのダウンタイムを発生させずに,異なるホスト間でHyper-V仮想マシンの移行させる機能である。これにより,仮想マシンの可用性を高められる。Live Migrationは,ライバルであるVMwareのVMotionに対するMicrosoftからの返答である(関連記事:「Windows Server 2008 R2の「Live Migration」はVMwareに対抗できるか」)。Live Migrationは,R2の新しいクラスタ共有ボリューム(Cluster Shared Volume:CSV)技術に基づいて構築されている。CSVは,複数のクラスタ・ノードが同一のLUN(Logical Unit Number)に同時にアクセスできるようにする技術だ。

第4位●Server Coreでの.NET Frameworkのサポート:現在のWindows Server 2008で最もがっかりさせられたことの1つに,Server Coreで.NET Frameworkがサポートされていなかったことがある。つまり,Windows PowerShellやASP.NETアプリケーションなど,Server Coreに最適と思われる技術が,Server Coreでは動作しなかったのだ。Windows Server 2008 R2では,ASP.NETとPowerShellの両方をサポートする.NET Frameworkのサブセットを新たにサポートすることで,この問題を解決している。

第3位●PowerShell 2.0:Windows Server 2008 R2には「PowerShell 2.0」が含まれている。PowerShell 2.0では,WMI(Windows Management Instrumentation)関連のコマンドレットが強化されているほか,リモート・システム上でのスクリプト実行,ScriptCmdletの作成,バックグラウンド・ジョブの実行などもサポートされている。さらに,R2はPowerShellスクリプトの開発およびデバッグ用の新しいグラフィカルなPowerShell UIも備えている。PowerShell 2.0はPowerShell 1.0と互換性がある。

第2位●リモート・サーバーの管理:Windows Serverを一元管理できる便利なコンソールを備えた「サーバー・マネージャ」は,Windows Server 2008の最も優れた改善点の1つだった。だが,サーバー・マネージャの使用範囲はローカル・システムに限られていた。Windows Server 2008 R2では,サーバー・マネージャをネットワーク・クライアントにインストールし,リモートのWindows Server 2008システムを管理することが可能になっている。

第1位●Active Directory Administrative Center:管理者にとってWindows Server 2008 R2における最も重要な変更点は,間違いなく新しい「Active Directory Administrative Center」だろう。Active Directory Administrative Centerは,従来の「Active Directoryドメインと信頼関係」や「Active Directoryサイトとサービス」,「Active Directoryユーザーとコンピュータ」といった管理ツールに取って代わるものである。Active Directory Administrative CenterはPowerShell上に構築されており,動作をスクリプトで記述することが可能だ。Active Directoryオブジェクトのごみ箱機能が新たに追加されているのも嬉しい。

■変更履歴
第6位のHyper-Vのところで,現在のWindows Server 2008ではHyper-Vが利用できないという誤解を与える可能性があるので編集部注を追加しました。また,公開当初はHyper-V 2.0では「仮想マシン1つにつき最大32個のコアを使用することができる」としていましたが,正しくは「最大64までの論理プロセッサをサポートする」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2009/06/10 12:15]