工業化社会や売り手社会では商品の供給が経済活動の中心であり、これまでサービスは商品に付随する位置づけだった。だが現在は、顧客が望むのは優れた商品だけではなく、その提供のされ方やほかの商品との連動で生まれる利便性や快適性へと広がってきている。レストランを例に取っても、おいしい料理の提供にとどまらず、食事を楽しむエンターテインメント性や感動の創造を企業理念とする会社もある。小売業でも販売する商品の価値に加え、接客態度や店舗イメージ、品ぞろえ、商品知識が顧客満足度に影響を与える。

 顧客と企業の関係を広い意味での「サービス」として考えると、顧客満足度は具体的に提供される商品やサービスだけではなく、接客や品ぞろえに見られるような提供のプロセス評価で決まる。モノに加えて、コトとしてのサービスに鍵がある。さらに、商品の購入やサービスを受ける動機づけとなる事前の情報提供や期待の形成も、サービスを構成する要素になる。同時に、商品を買ったり、サービスの提供を受けたりした後の、サービス効果の継続性や事後評価も、次の購買意欲に影響する。

 従って、サービスのデザインは事前の情報や期待の提供に始まり、商品やサービスそのものの提供、提供するプロセスの品質、そして提供後のフォローや満足度の持続という前後4つの視点から考えて、デザインすることが重要である。

 サービスの範囲を幅広くとらえるということは、何を扱うかだけではなく、顧客の状況や期待に、どのジャンルで、どのレベルまで応えるかを明確にする必要がある。小売業では、どんな商品をどんな売り方で販売するかを「業態」と呼ぶが、例えば、衣食住に欠かせない数十万品目を対面で販売するのが百貨店であり、食品中心にセルフサービスで販売するのがスーパーマーケットである。