仕事も生活もうまくこなすライフハッカー。上級者を目指すには、身近にあるコミュニケーション手段を最大限活用しなければなりません。IP化が進むオフィスの電話を含め、ずっと効率的に、より機動的に日常を過ごすための、ライフハック術を探求しましょう。ライフハックを可能にするテクノロジの基本から、研究所長自らが体験したエピソードなどを研究材料に、メリット/デメリットを考えます。

 はじめまして。「能地・UCライフハック研究所」所長の能地 將博(のうち まさひろ)です。これから電話機やUC(ユニファイドコミュニケーション)を利用した、ちょっとしたTipsやライフハックを探求していきましょう。第1回ということで、簡単に本研究所の目的や方向性をまとめてみたいと思います。

 テクノロジは日々進化し、われわれが働く上でも、そのテクノロジを利用しています。データ通信はVPN経由で社内へセキュアにアクセスができるようになり、電話などの音声通話もIP化によりインターネットを通じてコミュニケーションできるようになっています。またアプリケーションサービスもSaaSなど、インターネット環境があればどこからでもアクセスできるようになってきました。

テクノロジの価値を利用者視点で見直す

 企業はこれらのテクノロジを、社員の生産性向上、競争力強化、経費削減などの目的で導入しています。企業が営利を目的として活動している以上、経済合理性から、これらテクノロジを検討するのは当然のことです。そのためテクノロジが語られる際には、経済合理性にのみフォーカスが当たっています。しかし、テクノロジのメリットはそれだけでしょうか? 

 当然、テクノロジの進歩は、働く個人の仕事や生活をも豊かにすると考えられます。そこで本研究所では、UC製品を取り扱う企業に勤務する筆者が、エンドユーザーの視点から、新しいコミュニケーション手段やツールの使い方やメリットを考えていこうと思うのです。みなさんが、「へ~ そんな使い方あったんだ~」と思っていただければと思いますし、みなさんから新たな使い方も募集したいと考えています。

 「10日間会社に来るな!」

 これは、筆者の知人の会社(東京)で実際にあった出来事です。今回のパンデミック(世界的な大流行)が発覚した5月の連休明けに出張先や休暇での渡航先から帰国した社員に対し発せられたそうです。どの社員も感染の疑いがあった訳ではないのですが、ウイルスの潜伏期間を考慮し、10日間の在宅勤務命令が下されたようです。映画にみる別世界の出来事のように感じていたパンデミックの影響が、すぐ近くでも起こり得るのだと再認識させられました。

 言い古された言葉ではありますが、このようなパンデミックの発生は突然やってくるものです。だからこそ企業では、事前に事業継続計画書(BCP)などを作成し、非常事態が発生した際のビジネスの継続運営方法、フロー業務の規定、連絡体制の確立などを規定しています。

 上記の出社禁止命令も、この種のガイドラインによるものだと推察されます。しかし、出社禁止以上の規定、つまり出社禁止の場合に、どのように業務を遂行するかなど個人レベルの仕事の進め方などについては、規定はおろか、あまり考慮されていないのが実情ではないでしょうか。10日間の出社禁止命令が下れば、我々は在宅勤務を余儀なくされることでしょう。そうなってしまった場合、みなさんは、在宅でオフィスにいるのと同様の勤務を継続できるでしょうか?

意外に見落としている電話という手段

 在宅で仕事を行う際に、必要になってくると思われるのは、大きく三つあります。

・実作業を行う際のドキュメント(デジタルおよび紙媒体)
・調べことをするためのネットワークアクセス(社内およびインターネット)
・コミュニケーション手段(メール、電話など)

 これらをどうやって確保するかが問題です。ドキュメントについては、新たな作業をするにしても、やはり過去に行ったファイルや資料があると効率的ですし、完成度の高いものになります。ネットワークアクセスは、もはやなくてはならない存在ですね。特に社内へのアクセス環境は、社内インフラにあるアプリケーションを使う業務の場合には不可欠です。

 そして最後が、当研究所のメインテーマであるコミュニケーションです。Outlook Web AccessのようなSSLのWeb閲覧型メールサービスやVPN経由によるメールサーバアクセスはもはや常識としても、電話はどうでしょう? 携帯電話や自宅の電話で代替できなくもありませんが、通信費負担やオフィスの電話番号への受電はどうでしょう? 同僚と仕事を進めるためのミーティングには、どうやって参加すればよいでしょうか?