NTTドコモは、2010年4月に「一斉同報サービス(仮称)」の提供を開始する。携帯電話や衛星電話を端末として音声で一斉同報ができるほか、ファクシミリやメールなどの通信手段も併せて提供する。想定ユーザーに官公庁や自治体を掲げるこのサービスについて、NTTドコモ 法人事業部 法人ビジネス戦略部 衛星ビジネス・サービス支援担当課長の安藤和秀氏に、その狙いや仕組みなどを尋ねた。(聞き手は岩元直久=日経BPガバメントテクノロジー)

新しく一斉同報サービスを提供する背景は?

 一斉同報サービスは、携帯電話や衛星電話の端末に対して、一斉に音声通話ができるサービスです。音声の一斉同報に加え、ファクシミリ送信やメールの送信などの機能も備えています。NTTドコモは、ASP(application service provider)方式のサービスとして開発しており、2010年4月に提供を始める予定です。

写真●NTTドコモの安藤和秀氏
写真●NTTドコモの安藤和秀氏

 これまでNTTドコモは、衛星電話サービス「ワイドスター」で一斉同報が可能なサービスを提供してきました。自治体や鉄道会社などが主なユーザーです。ただし、衛星通信が前提であるため、専用の端末が必要であるなど使い勝手が今ひとつとの声もありました。

 また、2010年9月のサービス中止を表明した携帯電話の法人向けグループ間通話サービス「プッシュトークプラス」の代替として、一斉同報できるサービスを提供する必要もありました。

 一斉同報サービスは、端末として一般に普及している携帯電話が使えるため、ワイドスターのように衛星電話端末がなくてもサービスを利用できます。今回は、最大で200ユーザーまでのグループ通話ができるように設計してあり、20台までのグループ通話が可能だったプッシュトークプラスの置き換えにも使えます。

どのような利用者を想定していますか。

 ユーザーとしては、自治体や官公庁、企業などの利用を見込んでいます。すでに法人部門の公共担当には、引き合いがあります。

 利用シーンにはさまざまな形態があると思っています。一つの典型は、事業継続計画(BCP)の一環として、災害時などに緊急の連絡をするようなものです。これは、これまでの衛星電話によるグループ通話を一般の携帯電話も含めて使えるようにするタイプで、何かが起きたときに使うことを想定しています。もう一つは、業務上で一斉同報するような使い方であり、こちらは日常で利用されることを考えています。プッシュトークプラスの置き換えがこのタイプに相当します。

 料金などは、2010年4月のサービス開始までの早期に詰めなければならないと思っています。BCP対応で年に一度使うかどうかという利用者と、毎日の業務で使う利用者とでは、料金に対するとらえ方が違うと思います。それぞれに納得してもらえる料金体系を作らなければならないと考えています。サービス開始までは1年近くの時間がありますが、特に公共団体では予算との兼ね合いもあり、「早く料金体系を決めてほしい」との声も上がっています。