当研究所では、グローバリゼーションをキーワードに、これからの企業基盤を考えています。第1回から第5回では、グローバリゼーションに不可欠な「心(人)・技(テクノロジ)・体(プロセス)」について説明してきました。今回からは、喫緊の課題である「経費の節減、固定費の見直し」に対し、グローバリゼーションのアプローチでは、どのように対処すべきかを考えてみましょう

 みなさん、こんにちは。これまでの第1回から第5回までは、「グローバリゼーションの心・技・体」についてお話ししてきまいた。いかがでしたでしょうか?

 みなさんが現在担当されている業務が、ITや海外拠点も含めたグローバリゼーションに直接は関係がなくても、地域や拠点、事業部、本社などにおける機能の最適化に結び付けて考えていただければ、本コラムで述べた考え方が、種々の業務を遂行していくなかで活用できると思います。ここでの研究内容が、みなさんの担当業務の標準化に、少しでも参考になっていれば幸いです。

「経費節減、固定費見直し」を一過性にしない

 さて、今回のテーマに入ります。現在、私が担当させていただいているクライアント企業の方々は、昨今の経済状況を反映して、「経費の節減、固定費の見直し」が最大の重要課題・関心事になっています。みなさんの会社ではどうでしょうか?

 第5回で述べたように、IT部門のコストを改善するには、「一過性のコスト削減」と「恒常的コスト削減」の二つの戦略を同時に遂行しなければ、本質的なコスト改善は望めません。

 「一過性のコスト削減」例としては、「今期予定プロジェクトの凍結や外注契約の見直し」などを前回挙げました。こうした対策は、期中の経費削減という意味では、非常に有効です。しかし、同時にIT部門のさらなる付加価値の創造や、IT部門内の情報資産の有効活用などを1年間停滞させるというリスクがあります。効果が出るだけに、次年度も同じ状況なら、打てる手段が少なくなってきます。だから“一過性”なのです。

 これに対し、「恒常的コスト削減」は、IT部門の品質を保ったままで、生産性を改善し、サービス当たりの単価・コストを下げていくアプローチです。旬の話題になっているのが、経費削減のために、「固定費化した外注コストをどう変動費に変えられるか?」という議論です。

 これはユーザー企業側だけの問題ではありません。サービスプロバイダも実は、ユーザー企業のIT部門によって、なかば一方的に交渉されてきた「人月単価を基にしたコストのさらなる削減要求」には限界を感じています。双方の課題を解消するには、サービスプロバイダにとってもユーザー企業のIT部門にとっても、「Win-Win」の関係を築けるような、新たなモデルが必要になります。

 前置きが長くなりましたが、この「恒常的なIT部門のパフォーマンス向上(生産性の向上)」に寄与するのが、IT部門のパフォーマンスを数値化する、IT部門の可視化指標なのです。

 図1を見てください。製造部門の方には、“釈迦に説法”ですが、サービスの品質、生産性、サイクルタイムを指標と考えた時、これら三つのKPI(Key Performance Indicator、重要業績指標)には、ある相関性が成立します。

図1●サービスの品質、生産性、サイクルタイムのバランスを取る
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 簡単にいうと、成果物の品質を向上することだけにとらわれると、品質管理プロセスが増え、結果として、生産性とサイクルタイム(納期)が下がります。逆に、生産性の向上だけに注力すると、品質管理プロセスが必要以上に削減され、品質の劣化を招きます。つまり、これらの相関性を知ることで、自部門に合った3要素のバランスを取ることができるようになるのです。