データセンターでは比較的安価に,一般的なオフィスビルより信頼性の高い環境でサーバー機を運用できる。この利点によってデータセンターの需要が高まっている。IDCジャパンの調査によれば,2007年に2979億円だったデータセンターの市場は,2012年には5125億円に達する見込みという。

 では,データセンターはどんなサービスを提供しているのか。どんな設備によって構成されているのか。ITエンジニアとしては,そうしたデータセンターの基本を知っておきたい。

 まずデータセンターの最も基本的なサービスは,大きく二つある(図1)。一つは,利用企業がサーバー機やネットワーク機器を持ち込んで使う「ハウジング」。いわばラック貸しで,「コロケーション」とも呼ばれる。もう一つは,データセンターが用意したサーバー機を借りる「ホスティング」である。このサービスを「レンタル・サーバー」と呼ぶデータセンターもある。

図1●データセンターが提供する基本的なサービス
図1●データセンターが提供する基本的なサービス
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 さらに細かく分類すると,ハウジングには,1台のラックを1社で専用する「ラック専用型」,複数の利用企業で共用する「ラック共用型」,ラックを利用しない「スペース利用型」がある。ホスティングにも,サーバー機を専用する「サーバー機専用型」と,共用する「サーバー機共用型」がある。

 ハウジングでもホスティングでも,データセンターは一般にインターネットにつながるネットワークを提供しているのに加え,利用企業が独自に専用線をラックに引き込むこともできる。

 データセンターを構成する設備に話を進めよう。主要な設備は五つある。一つ目は「入退場管理」の設備。データセンターは建物内部がセキュリティ・レベルでゾーン分けされ,ICカードや生体認証装置による認証を受けないと立ち入れないようになっている。

 二つ目は「ネットワーク」の設備,三つ目は「電源」の設備である。これらの設備は冗長化されているのに加え,自家発電装置とUPSによって,電力会社からの送電がストップしても数日は電力が供給される。

 四つ目は「災害対策」の設備。主に地震と火事への対策で,揺れを抑える免震設備や,液体でなく消火ガスを使った消火設備を備えている。

 最後の五つ目は「空調」設備である。ラックの並びなど,発熱するサーバー機を効果的に冷やす工夫をしている。

 これら五つの主要設備について,次回から4回にわたり紹介していく。なおここで取り上げるのは,一般的なデータセンターの例である。データセンターが義務として準拠しなければならない設備の基準がなく,差が大きいことに注意してほしい。