英BTグループ テクノロジー&イノベーション 日本・韓国担当副社長 ヨン・キム 英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
ヨン・キム

 欧州のCATV事業者は,歴史的に目立たぬ存在だった。1980年代半ばまで規制があり,電波の届かない地域以外では番組配信が許可されていなかったからだ。通信事業者と激しい争いをしている米国のCATV事業者とは対照的だ。

 しかし欧州でも1985年の通信自由化以降に規制緩和が進み,広い地域で多チャネル放送と電話,双方向サービスが提供可能になった。これによって欧州のCATV事業者は勢力を拡大した。ここ最近,欧州のCATV事業者の評価はうなぎ上りだ。「通信事業者よりもポテンシャルは上」と評価するアナリストが登場するほどだ。

トリプル・プレイで攻勢

 英国では1990年代末のドットコム・バブルの崩壊を契機に,CATV事業者の統合が始まった。今では英ヴァージン・メディアが英国における唯一のCATV事業者だ。ヴァージン・メディアのブローバンド・サービスは3600万世帯が加入しており,アクセス網を持つ会社としては英国最大規模である。

 ドイツの通信サービス分野では,相変わらずドイツテレコムが支配的事業者だが,KDG(Kable Deutshland Group)とUnitymediaというドイツのCATV事業者は,2008年のブロードバンド加入者を倍増させた。

 シェア拡大の理由は,CATV事業者が通信事業者よりも魅力的なサービスをそろえているからだろう。まずはブロードバンド・サービスの速度。CATV事業者のサービスは,下り方向の通信速度が30M~50Mビット/秒であり,欧州のどの通信会社よりも速い。欧州の通信事業者は,銅線のネットワーク上で提供するDSL技術がメインだ。光ファイバを使ったサービスはほとんど進んでいない。通信事業者がCATV事業者の速度に対抗するには,膨大な投資で光ファイバのインフラを構築する必要があり,当分追い付けそうにない。

 もう一つの優位性は,ほとんどのCATV事業者がテレビとブロードバンド,電話というトリプルプレイ・サービスを提供している点。ヴァージン・メディアなど,さらに携帯電話サービスもバンドルしている事業者もいる。

 通信事業者もIPTVサービスを開始してCATV事業者のバンドル・サービスに対抗しているが,ユーザーを奪い返すには至っていない。英国やベルギー,オランダ,スイスでは,CATV事業者がブロードバンド・サービス加入者の30%近くを占めている。

 競争が激化するバンドル・サービスの市場では,世界的な経済不況の影響が追い風になるとみられている。不況によって視聴者が外に出なくなり,家の中でこれまで以上に多様なコンテンツを楽しむ機会が増えるからだ。

 そうなるとCATV事業者は,さらなる恩恵を受けそうだ。通信事業者よりも充実したサービス内容をそろえているからだ。現時点でもCATV事業者のARPU(1契約当たりの月間平均収入)は通信事業者よりも高い。こうした点こそ,アナリストがCATV事業者を高く評価する理由だろう。

ヨン・キム(Yung Kim)
英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
 ロンドンで4月2日にG20サミットが開催された。グローバル金融産業に対して,良い意味で規制をかけることに合意した。国際不況を克服でき,経済状態が良くなるように願っている。しかし20カ国の世界の首脳が集まったため,ロンドンの警備体制は半端ではなかった。ある英国の新聞も指摘していたが,米国大統領への警備はやりすぎだった。私たちは経済的にもセキュリティ的にも“不安定”な時代に住んでいるということかもしれない。