フランスは,欧州諸国の中でモバイル・インターネットによる商取引が進んでいる。複数の事業者がリンクを張る一般サイトのポータルや,コンテンツ・プロバイダと携帯電話事業者が連携できる課金・決済の仕組みがフランス・テレコム傘下企業によって運営・提供されている。

(日経コミュニケーション編集部)

武田 まゆみ/情報通信総合研究所 研究員

 欧州の多くの国では,通常のSMS(short message service)よりも料金が高い「プレミアムSMS」によるモバイル・コンテンツの提供・購入が一般的であり,モバイル・インターネットを使った商取引は発達していない。しかし,その中でもフランスは,インターネットを介したモバイル商取引で,他の欧州諸国よりも先行している。

全事業者対象の「GALLERY」

 フランス最大手のフランス・テレコムは,モバイル・コンテンツの商取引に積極的な事業者の一つである。

 フランスには,「GALLERY」(ギャラリー,写真1)と呼ぶ一般サイトのポータルが存在する。GALLERYは,携帯電話事業者大手3社(オレンジ,SFR,ブイグ・テレコム)が共同で立ち上げたサービスで,フランス・テレコム傘下のオレンジが運用している。現在,GALLERYには,MVNO(仮想移動体通信事業者)を含む全携帯電話事業者の公式サイトからリンクが張られている。このサイトを介すことで,コンテンツ・プロバイダは,WAPの利用が可能な携帯電話ユーザーを対象に,自社ブランドによるコンテンツ提供が可能となる。

写真1●全携帯電話事業者の公式サイトからリンクが張られている一般サイトのポータル「GALLERY」<br>オレンジ,SFR,ブイグテレコムの携帯電話事業者3社が共同で立ち上げたサービスである。
写真1●全携帯電話事業者の公式サイトからリンクが張られている一般サイトのポータル「GALLERY」
オレンジ,SFR,ブイグテレコムの携帯電話事業者3社が共同で立ち上げたサービスである。
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 GALLERYには「Code Of Gallery」と呼ぶ規定がある。GALLERYに参加するコンテンツ・プロバイダは同規定に従ったサイト提供が義務付けられている。それによってすべてのコンテンツは,サイトに公開される前に携帯端末への技術的対応を含め,精査される。また,GALLERY内のコンテンツの内容や倫理規定の順守に関しては,2005年6月に設立されたAFMM(L’Association Francaise du Multimedia Mobile)が監視している。そのほかAFMMは,コンテンツ・プロバイダに対する導入サポートも担っている。

 他方,通信事業者に対しては,(1)GALLERYのサービスに対応するWAP対応端末をユーザーに提供すること,(2)データ通信料以外の請求をしてはいけないこと,(3)サービスの品質に対する関与や制御を一切しないこと,(4)有料コンテンツの料金の請求と徴収の責を追うこと,などが義務付けられている。

 また,SMSが一般的な欧州のユーザーからは,2~3回のクリック操作でWebサイトにアクセスできる使い勝手が好評価を得ている。GALLERYへのアクセス方法は2通り。各事業者の公式サイトに掲載されている「GALLERY」ロゴをクリックし,メニューを追って選択する方法と,サイト名やキーワードを入力したSMSを「30130」番に送信して希望サイトのURLを受信する方法がある。GALLERYサイトの閲覧には,通常の通信料金だけがかかる。有料サイトの課金は,日額や月額などの定額課金と,コンテンツ購入時に発生するイベント課金の2種類。コンテンツの料金は,0.2ユーロ(約27円)から4ユーロである。これらのコンテンツ料金は,通常の通信料金の引き落としと合わせて,携帯電話事業者から請求されるか,もしくは直接プリペイド分から引き落とされる。