ここ数年,IT分野の国際競争力を議論する際に「ガラパゴス」という言葉がよく使われる。ガラパゴス諸島に生息する動植物のように外界と隔離され,独自の進化を遂げた状態を指したものだが,一般にはあまりいい意味では使われない。「日本はガラパゴスだから国際化は無理」という使い方から,そのニュアンスが伝わるだろう。悪しきガラパゴス化の代表例として挙げられるのが,日本が突出して進化した携帯電話だ。

 そんな空気を変えることを目的に,超ガラパゴス研究会(正式名称は,IT国際競争力研究会)が発足した。日本固有の技術や文化の価値を否定することなく再認識し,海外に売り出すための提言を2009年中にまとめる。

 2009年4月中旬に開催された第1回の会合では,ガラパゴス化の一例と言える,日本の低廉なブロードバンド環境や,電機業界全般に見られる国際競争力低下が議論の題材となった。低廉なADSLをどう評価するのかについて委員の意見は分かれ,日本が得意とするFTTH技術の海外での存在感にも話が及んだ。初対面の委員が多かったにもかかわらず,持論をぶつけ合い,実のある議論だったように感じた。

 委員の一人であるソフトバンクモバイルの松本徹三副社長は,自己紹介の挨拶で「なぜ“ガラパゴス”と揶揄されるかと言えば,売れないから。売れれば,誰も文句は言わない」と述べた。「なぜガラパゴス化するのか」に対する答えは,ある意味,この発言でほぼ得られたようなものである。今後の会合では,「どうしたら売れるのか」という議論が深まることに期待したい。