「創造的な仕事(クリエイティブワーク)」を進めるための情報システムについて、コンサルティング会社シグマクシスの戸田輝信パートナーによる短期集中講義が終了した。講義内容に対する質問や意見の中から代表的な質問に対し、戸田氏自らが回答する。今回は、第5講に対する回答と、そこでお願いしたアンケートの集計結果を掲載する。

 第5講、「コラボレーションに取り組もう」に対しても、多くの意見や質問をいただいた。その中から代表的な質問について回答する。

質問1:最終回は、残念ながらよく理解できませんでした。「Webコラボレーションシスシステム」では、「Officeアプリケーションを共有し、複数人で一つのプレゼンテーション資料を議論しながら作る」以外にどんなことができるのでしょうか。
質問2:「いつでも、どこでも、誰とでも」の一方で、実際に顔を合わせることの重要性が指摘されています。仮想環境と実環境の使い分けや組み合わせ方について、どう考えておられますか?

 最終回の第5講については、「“誰とでも”をどう実現するのか」という論点に集中したため、内容が実現手段中心になってしまいました。ここでもう少し、本質的な点を補足させてください。

 結局のところ、「遊牧型」のワークスタイルが、非常時のために必要なものか、それとも常時あるべきものなのか、というポイントに話が行き着くのではないかと考えます。そして私は、これを「常時あるべきもの」だととらえているのです。Webコラボレーションシステムは、遊牧型を「常時のワークスタイル」と考えるために必要不可欠な道具の一つです。Webコラボレーションすること自体が、本質的な目的ではありません。

 第2講の質問4の回答でも少し書きましたが、現代社会において働き方の多様性を促進する、あるいは外部パートナーとの協業を支援することは、企業の使命かつ戦略でもあると考えます。

 もし、会社にくることが必須で、オフィスでなければ仕事ができないとすると、出産育児や家族の介護などのために会社に出て来られない人たちは、どうすればいいのでしょうか?ITを利用しない仕事はいまや特殊です。かつての紙と鉛筆のように、ITはすべての仕事を行う上での前提であると同時に、そのITが何を可能にするかで仕事そのものの質と効率性が大きく変わってくるのです。

最も高い価値を生める人に任せられる環境を

 最終的には、「この仕事は、この人に任せれば最も高い価値が生まれる」と思える人に、その仕事を任せられる環境があり、任せられた人も、「自分がどこにいようとその期待にこたえられる」という環境があることが、企業にとっても社員にとっても“Win-Win”な関係をもたらすと考えます。その意味で、Webコラボレーションシステムは、それを実現するための重要な役割を果たします。

 ちなみに、私はシグマクシスのITシステムを作る際にも、地方に拠点をおく取引先のみなさんと仕事をしています。これまでの経験とその企業の持つノウハウ、人財をぜひ活用したいというのが大きな理由です。彼らとは、日常的なやりとりや打ち合わせはもちろん、資料の作成やスペックの確認作業もWebコラボレーションシステムを通じて行っています。

 そして本当に対面で集中的に作業をする必要がある場合のみ、上京頂くという形を採っています。コスト面でも効率面でも非常に効果が高いのみならず、物理的な距離感をハンディキャップと感じることなく、本当にお付き合いしたい相手と仕事ができるという意味では、品質の向上に大きく役立ちます。

 ただし、Webコラボレーションシステムがあれば充分かといえば、当然そんなことはありません。仕事をするうえでその機能を活用する、ということと、仕事をするうえでのあらゆるコミュニケーションすべてをWebカンファレンスシステムですませる、ということは、全く違います。

 当たり前のことですが、私自身、部下に対する指導やカウンセリングなどは、できるだけフェース・ツー・フェース(F to F)であるべきだと思いますし、仕事をだれかに頼む時も、できるだけメールを使わないようにしています。よく、後ろにいる人や目の前にいる部下にメールで指示を出してやりとりしている人がいますが、これもいただけない。人間同士のコミュニケーションの基本がF to Fである原則は変わりません。そして、Webコラボレーションシステムはもとより、メールもチャットも、F to Fの代替になるとは思っていません。