「創造的な仕事(クリエイティブワーク)」を進めるための情報システムについて、コンサルティング会社シグマクシスの戸田輝信パートナーによる短期集中講義が終了した。講義内容に対する質問や意見の中から代表的な質問に対し、戸田氏自らが回答する。今回は、第3講に対する回答と、そこでお願いしたアンケートの集計結果を掲載する。

 第3講、「徹底した安全対策を施す」に対しても、多くの意見や質問をいただいた。その中から代表的な質問について回答する。

質問1:社内専用ネットワークを設けないのは分かる。だが、そのためにレスポンスや安定性が低下するはずで、どれくらい影響があるのかをあらかじめ知ることが大切だと思います。
質問2:利用機能の制限よりもレスポンスや安定性が重要だと思います。機種の統一はその意味で必要なことだと思いました。

 社内専用ネットワークの方が安心であれば、システムの種類によっては、社内専用を選択する可能性はあると思います。ただし、帯域とカバーできるエリア、安定運用に関わる管理負荷などを考慮すると、どこかで限界にぶつかると思われます。そのような意味では、おっしゃる通り影響度をあらかじめ意識しておくことが大切ですね。

 ただ、現在の日本におけるインターネットのサービスレベルはかなり高いことも事実です。例えば、我々が日常的に社外とのやり取りに利用されているメールはすべてインターネットを経由しているわけですが、ここ十数年インターネット障害が理由で支障をきたしたという記憶はありません。これはサービスレベルでいうと一般専用線を超えるレベルに達しています。

 また近年では、キャリアが提供している一部のVPNサービスなどもインターネットを利用しているわけです。そういう意味でも社会インフラとしてのインターネットは、信頼性が高いものになりつつあると思います。

 2009年5月時点で、100メガビット/秒でインターネットに接続すると月額料金は10万~20万円程度だと思います。各支店に専用線網を張り巡らし、同程度の帯域を確保するコストを考えると、メインをインターネットにして、非常時のために10メガビット/秒程度の専用線でバックアップをとる、さらに非常時には縮退運転を行うなども、効果的な手段の一つではないかと思います。

質問3:技術的には、十分なセキュリティを保ってテレワークすることは可能であるのだが、上司がそれを理解しようとしない。特に部下を「監視」していることで自分が仕事をしている気になっている上司に、その傾向が顕著。「クリエイティブワーク」ができるような環境を作るために、社内で政治的に動かざるを得ず、モチベーションが下がる。

 同じようなコメントを複数いただきました。ストレートな回答にはなりませんが、思うところがありますので少々、以下でご説明させて下さい。

 私が本講座で提示したような取り組みを企業全体で推進する場合、情報システムの視点のみの合理性で押し切るのは、困難かもしれません。上司の部下に対する管理手法は、ある意味、組織文化やご本人の「価値観の現れ」でもありますから、変革が必要な場合は、経営側からの指導や熱心な働きかけ、もっといえば組織風土変革が必要になる場合もあるでしょう。