新型インフルエンザが発生し、パンデミック(世界的な大流行)の脅威が現実のものになった。感染の拡大によっては、企業や官公庁は業務停止に追い込まれかねない。ウイルスの侵入を防ぐ「水際防衛」を支援する技術や製品を紹介する。

 パンデミック対策の技術の一つは「水際防衛」タイプだ。一番人気はサーモグラフィによって入館者の体温を検知し、基準を超える人間の進入を許さないというもの。大手ゼネコンの大林組は建物内の感染拡大を水際で防ぐ入館管理システム「パンデミックゲート」を開発した。(1)入館ゲートで体温を測定、(2)消毒のための手洗い、(3)マスク着用―という3段階のチェック項目を通過した来場者のみに入館を許可する厳重さだ(図1)。

図1●大林組が開発した「パンデミックゲート」
図1●大林組が開発した「パンデミックゲート」
3段階のチェック項目をクリアして初めて建物の中に入館できる仕組み
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 体温測定には赤外線サーモグラフィシステムを活用。まず人体の表面温度を測定し、基準温度を超えると体温計で検温する。ここで発熱を確認した場合には入館を許可せず、帰宅または通院を促す。発熱の疑いがない場合も所定の手洗い場で一定時間手洗いをしてもらう。その後、顔認証技術を活用してマスクの着用を確認してから建物への入館を許可する。

 各段階でICカードによる認証を行い、チェック漏れを防ぐ。三つのチェック項目のなかからいずれかを選択して導入することも可能だ。「パンデミックゲートは開発段階だが、すでに企業からの問い合わせは多い。施設ごとに打ち合わせをしながら柔軟に対応していく」と大林組東京本社エンジニアリング本部医療福祉推進部施設技術課の鈴木光義課長は話す。

受付時にモニターで監視

 NECも赤外線サーモグラフィシステムの活用に取り組む。主に本社と関連会社の従業員を対象に感染予防対策製品の実証実験を始めた。本社の入り口付近に赤外線サーモグラフィシステムを設置(写真1)。体表面温度が36度を超える場合にはあらかじめ用意した体温計で検温させ、38度を超えると手洗いとマスク着用を促す。

写真1●NECが本社で実証実験中の赤外線サーモグラフィシステム
写真1●NECが本社で実証実験中の赤外線サーモグラフィシステム
入館者の体表面温度を赤外線カメラを使って測定する
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 赤外線カメラで来場者を撮影した映像を受付のモニターに表示する。通常時は白黒の映像だが、体表面温度が36度を超える部分は赤く表示してアラームを発する。「受付の担当者が業務をしながら画面を見るので、ひと目でわかるようにした」(NECの福地丈晴事業支援部勤労マネージャー)。赤外線サーモグラフィシステムは、グループ会社のNEC Avio赤外線テクノロジーが開発した。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)騒動で空港などに導入されたが、最近になって新型インフルエンザ対策で企業からの引き合いが増加しているという。