「創造的な仕事(クリエイティブワーク)」を進めるための情報システムについて、コンサルティング会社シグマクシスの戸田輝信パートナーによる短期集中講義が終了した。講義内容に対する質問や意見の中から代表的な質問に対し、戸田氏自らが回答する。今回は、第2講に対する回答と、そこでお願いしたアンケートの集計結果を掲載する。

 第2講、「遊牧型ワークスタイルの勧め」に対しても、多くの意見や質問をいただいた。その中から代表的な質問について回答する。

質問1:社員数が少ない場合だから、ここで提示されている仕組みでも何とかなっているのではないか。
質問2:非常におもしろい視点で参考になった。費用対効果の部分で、どのようになるのかに興味がある。数百台、数千台規模でPCを利用している企業などの場合、管理するサーバーの運用によって評価が変わるのではないだろうか。

 私の約15年の経験の中には、事業会社での導入例や、ユーザー数が数千~数万人の状況もありました。よって、「大企業における恒常的運用は充分可能だ」と実績から言えます。特に、大規模導入を行って感じたのは、人数規模が大きくなればなるほど、規模の経済性が働いて、1端末当たりのTCO(所有総コスト)が低くなるということです。

 何種類ものハードウエア、様々なOSやソフトウエア構成、多種多様な部門の要望。これらに対応するのが情報システム部門の仕事だと思われている方が大半なのかもしれませんが、こうした状態をマネジメントするには、膨大なコストがかかっているのです。

 現在、多くの企業において、社内に多様なIT環境が散在する大きな理由は、社内部門が自らの業務効率を軸に、最も使いやすい環境をそれぞれ構築しているからだと思います。これは運用コストを大幅に増加させるだけではなく、全社レベルでの情報共有が阻害されてしまうという弊害も引き起こします。

 第1講への回答でも書きましたが、もはや部門を一つの完結した単位としてみなす縦割意識の中で、それぞれのルーチンワークに終始する時代は終わり、あらゆる人同士がコラボレーションし、クリエイティブワークを手がけていく時代になってきています。ですから、IT投資という観点でみれば、部門内での最適化よりも、全社の最適化を目指す方が、社員同士が創り出す相乗効果で大きな効果が得られるのです。

 全社が共通のIT基盤の上で働くということは、企業における「組織」という概念に対する価値観を変えていく必要があるのかもしれません。ITリテラシを全社同じレベルに維持すること、それを向上させていくというアクションも必要でしょう。大切なのは、「ITを使ってどういう会社になりたいか」ということを、まず明確にしていくことなのだと思います。

質問3:ITリテラシを遊牧可能なレベルに引き上げるための教育が必要なのではないだろうか。

 全くその通りだと思います。事故や問題が起きにくい仕組みを作ることがIT環境を提供する側の使命であることは間違いのないことなのですが、どこまでやっても「完全」はあり得ません。人は、「偶然」「故意」に関わらず必ずミスを犯します。このミスを最小限にするために教育を徹底し、情報セキュリティに対するリテラシを上げていくことが、遊牧型の情報基盤を運営する上では、必要不可欠です。