米IP Devices代表
岸本 善一

 前回は,従来型の2重床を使った冷却方法だけでは,次世代のデータセンターに対応できないことを説明した。今回は,最近注目されている新しい冷却技術について話しを進める。

 コンテナ型データセンターは,冷却装置とラックとの距離が短いので,冷却効率が高くなる。Microsoftでは,一般にコンテナ型データセンターのPUEは低くなると主張している。同社のゼネラル・マネージャを務めていたMike Manos氏(現在はDigital Realty Trust社の上級副社長)は,ブログの中でPUE1.22を達成したと報告した。

 だが,すべてのデータセンターをコンテナ型にできるわけではない。既存のデータセンターにおいて,ラック当たりの消費電力が増えた場合,どう対処すればいいのか。APC社は,ラック列の何カ所かに冷却装置を組み入れる方法を提唱している。1つの冷却装置で,同じ列の複数のラックを冷却するやり方だ。ラック列の中に冷却装置を置くと,部屋全体を冷却するよりも冷却対象を絞ることができるので効率がいい。部屋全体では冷却範囲が広すぎ,ラック毎では逆に狭すぎるという時にこの方法が有効になる。,

 だが,多くのブレード・サーバーを搭載したラックでは多量の熱が発生するため,この方法では間に合わず,ラック毎の冷却が必要になる。ラック毎ならば,ピンポイントで効率よく冷却できるからだ。もちろんその分コストは高くなる。

タイトル
写真1●Libert社の水冷ラック冷却装置「XDK-W/XDR-Wシリーズ」

 水冷のラック冷却装置が各社から登場している。写真1は,Libert社が提供している水冷のラック冷却装置「XDK-W/XDR-Wシリーズ」である。水冷が注目されているのは,水が空気よりも冷却効果が1000倍以上も高いからだ。しかしその半面,水冷の装置は空冷の装置よりも構造が複雑で,設定が困難である。特に,空冷の装置を水冷に交換することは容易ではない。データセンターには,電源や通信ケーブルなどが入り組んで存在している。当初から絶縁を保証するような設計になっていれば別だが,後から水冷用のパイプを導入することには大きな危険が伴う。