経営者にとって、情報システムは頭痛の種になりがちだ。業務に必須だが投資に見合った効果が出るとは限らない。ほかの設備投資に比べて専門的で難解でもある。

 野村総合研究所で約20年間勤務した後に、人材派遣大手スタッフサービスのCIO(最高情報責任者)を務め急成長を支えた著者が、ベンダーとユーザー両方の視点から、“システム屋”の思考回路と、上手な付き合い方を説く。

 第7回から前回(第12回)までは、“システム屋”個人の資質に焦点を当てて説明してきました。「多忙と徹夜を喜ぶシステム屋」「『IT以前』と『IT以後』に分けたがるシステム屋」などに注意が必要だと述べてきました。

 今回からしばらくの間は、組織としての“システム屋”、すなわちシステム会社とどう向き合うべきかに焦点を移したいと思います。

 システム会社は、ソリューションという言葉をよく使います。直訳すれば、問題解決への道・方法論といった意味になるのでしょうか。では、多くのシステム会社の組織図にある「ソリューション事業部」などは、一体どのような問題を解決してくれるのでしょうか?

 システム会社の組織が、金融システム事業部、流通システム事業部など、ユーザー企業の業種ごとに構成されることが多いことは、既に第4回などで指摘しました。システム会社の組織図を見ると、これらと並列に「ソリューション事業部」といった名称の組織が存在することがあります。

パッケージソフトを担ぐ“システム屋”

 システム会社の営業担当者に「ソリューション事業部って何?」と尋ねれば、経験の浅い営業担当者なら「○○というパッケージソフトを担いでいます」と白状してくれることでしょう。もう少し経験豊富な営業担当者なら「金融業界特有の業務なら金融システム事業部が、流通なら流通システム事業部が対応しますが、業種業態を越えた共通の問題解決のために、世界で売れている○○というパッケージソフトを提案する事業部です」という答えが返ってきます。

 いずれにしても、「ソリューション=パッケージソフトを売ること」だとみてほぼ間違いありません。

 「世界で売れている○○」には様々なキーワードが当てはまります。その代表選手にERP(統合基幹業務)と呼ぶシステムがあります。ERPはEnterprise Resource Planningの頭文字を取ったもので、「企業における資源の計画」といった意味になるでしょう。

 ERPが世界で注目されてきた経緯を簡単に説明します。そもそも欧米先進国ではパッケージソフトが日本の何十倍もの密度で普及しており、様々な業務に対応するパッケージが豊富に存在しています。在庫管理業務や店頭販売業務、経費管理業務、工程管理業務など、各種業務に対応するパッケージがそろっています。

 しかしながら、複数の事業を運営している大企業の場合、A事業向けのパッケージとB事業向けのそれとは無縁です。会社全体で何かを管理しようとする場合、それに応えるパッケージは存在しませんでした。そこに出てきたのがERPです。Enterprise-wideすなわち企業の全事業を対象範囲として、資源の最適配分を計画するための情報システムです。