ITエンジニアにとって文書作成技術は欠かせません。日常業務のメールのやりとりにはじまり,要件定義書,機能仕様書,プログラム仕様書など,文章を作成しなければならない機会は頻繁にあります。こうした文書は,チームで業務を進めたり,顧客と合意を取ったりするうえで,とても重要な役割を果たします。
私はこれまで,約1000社の企業に対して,コミュニケーション術やプレゼンテーション術をはじめとするコミュニケーション・スキル関連の研修を実施してきました。その中で感じているのが,ここ近年,コミュニケーション・スキルの中でも,文章を論理的にわかりやすく書く「ロジカル・ライティング」の需要が増えていることです。
文書作成が苦手な人には共通点がある
実際にITエンジニアの皆さんの声をうかがってみると,以下のような声をよく聞きます。
「文章を書くのが嫌で理系学部に入ってSEになったのに,職場で文章を書く機会が多くて困っている」
「自分の書いた文章の意図が顧客に全く通じないときがある。ときには社内の人間にさえ通じないこともある」
「簡単なメールの文章を作るだけなのに,いろいろ考えすぎて書き直しているうちにいつも深夜になってしまう」
いずれも,深刻な悩みを抱えていらっしゃいるというのが実感です。このように感じている人の悩みの共通点を探ってみると,おおよそ次のようになります。
・思いついた内容を思いついたまま列挙してしまう
・書いているうちに何を伝えたいのかが分からなくなる
・文章がダラダラ続く感じがする
・一文が長くなってしまう
・誤字や脱字が多くなりがち
・あいまいな表現が多くなってしまう
・敬語の使い方がよくわからない
・文頭に書く定型表現がわからない
・場面や用途に合った文章を作れない
「ああ,私もそうだ」と,共感する人は多いのではないでしょうか。
誰でもわかりやすい文書が書けるようになる
では,これらの悩みに対して「いったい何が問題なのか」を考えてみましょう。上で挙げた悩みの問題点を分類してみると,大きく三つに分けられます。
ここが問題!
問題1:伝えたい情報を整理できていない
問題2:文章の表現方法がわからない
問題3:目的に応じた文書の作成方法がわからない
ということは,これら三つの問題をクリアできれば,文章をわかりやすくできます。そこで本連載では,三つの問題をクリアするための目標を定めました。
これで解決!
目標1:文書の全体構成を組み立てられるようにする
目標2:基本的な文章表現のルールをマスターする
目標3:目的に応じた文書を作る実践力を身に付ける
この三つの目標を達成して,文書作成の基本さえ踏まえれば,エンジニアにとって必要な技術は必ず身に付きます。しかもそれは,それほど難しくありません。なぜなら,ITエンジニアが書く必要のある文章は,人を感動させる文章や高尚な文章である必要はないわけですから。正確に分りやすく情報を伝える文書作成は,今後,本連載で紹介するポイントを押さえれば誰でもできるものなのです。
では次回は,目標1「文書の全体構成を組み立てられるようにする」から,具体例を通してご紹介していきます。
パンネーションズ コンサルティング グループ