使用済み液晶テレビのビスを外す作業員
使用済み液晶テレビのビスを外す作業員。装置を動かすと前面と裏面が反転する

 4月から、液晶テレビとプラズマテレビが家電リサイクル法の対象に追加された。シャープは、薄型テレビ専用のリサイクルラインを稼働させた。法律で定めるリサイクル率50%の達成を目指す。

 薄型テレビのリサイクルラインは、シャープが三菱マテリアルなどと共同で設立した家電リサイクル会社である関西リサイクルシステムズ(大阪府枚方市)の第2工場に設置した。投資額は約3000万円。2009年度は約3万台の処理を見込む。

 液晶テレビやプラズマテレビは、ブラウン管テレビより大型化したため重い。液晶テレビの重さは45型で30kg前後になり、作業員が1人で持ち運ぶのは困難だ。ビスの数も多く、前面と裏面の両面に付いている。

 そこで、誰でも容易に解体できるように、テレビをつり下げて搬送する装置や、傾けながら前面と裏面をひっくり返す装置を導入した。バックライトの水銀対策も講じている。破損した際に中の水銀が飛散しないように、作業台に設けた排気穴から吸い込むようにした。吸い込んだ水銀は活性炭で吸着、除去する。

 使用済み薄型テレビから回収した基板やきょう体といった部材は、製錬事業者などへ引き渡し再資源化する。家電リサイクル法が定めるリサイクル率50%という目標数値は十分に達成できるとみている。

表●薄型テレビの国内出荷台数の推移
表●薄型テレビの国内出荷台数の推移
出所/電子情報技術産業協会
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 シャープは、使用済みの冷蔵庫や洗濯機から回収したプラスチックを自社製品の部材に再び利用する自己循環型のマテリアルリサイクルを推進している。2008年度は1000tを再利用する計画である。

 新たに回収を始める薄型テレビは2000年代半ばごろから普及し始めたばかり。2009年度に国内全体で廃棄される薄型テレビは約30万台ともいわれ、かなり少ない。ただ、出荷台数は急速に増えており、2008年度は約1000万台になる見通しだ。回収台数が増えれば、冷蔵庫や洗濯機と同様に再生材を自社製品に戻すことも視野に入れる。

法律の先取りも必要に

 残る課題は、液晶パネルだ。現在はリサイクルが困難という理由から、50%という法定目標に液晶パネルの分は入っていない。2014年にリサイクルの対象に加え、法定目標を引き上げるとみられる。

 液晶パネルの透明電極にはレアメタルのインジウムが使われている。シャープは既に、分離・回収技術を開発しており、実用化を急ぐ。産出地が中国に集中しているインジウムは価格の高騰など調達面に不安があるが、自社で分離・回収できれば安定確保とリサイクルコストの低減に結び付く。法律を先取りした対応も検討する必要があるだろう。