「米Microsoftが,評判の悪い現行クライアントOS『Windows Vista』への移行を見送るよう顧客にアドバイスした」という話題が,ウイルス並みの広がりを見せている。これが事実であることは間違いない。ただし,いくつか前提条件がある。

 MacintoshおよびLinuxの支持者が自分たちの勝利を誇示し始める前に,同社の発言内容を正確に示しておこう。同社は,「顧客のなかには『Vista飛ばし』を望むところがあるかもしれない」と示唆したに過ぎず,そうした顧客には「Windows Vista導入を見送って『Windows 7』へ移行する」ことを推奨している。

 今回の発言を受けて,ある辛辣なLinux系サイトには「私が以前からずっと主張し続けてきた通り,Microsoftはついに『Windows Vistaが失敗作』であることを認めた」という不正確な見解が掲載された。また,これよりは若干控えめの「MicrosoftのWindows担当幹部が今週,複数の企業にWindows Vista導入計画を破棄するよう説明した」といった記事もある。

 本当はどのような状況なのだろうか。Microsoftが2008年5月第3週にカリフォルニア州ロサンゼルスで開催したIT技術者向けカンファレンス「TechEd」で,同社上級副社長のBill Veghte氏は基調講演の際「Windows Vista導入を始めたばかりの企業顧客は,導入計画を止めてWindows 7を待った方がよい。当社は2009年のホリデー・シーズンに向けてWindows 7を発売する」と述べた。

 さらに同氏は「すでにWindows Vistaを導入しているのなら,今のまま使用すればよい。(ただ)Windows Vistaの試験を始めたばかりなら,予定を変更して今後は(Windows 7の)製品候補(RC:Release Candidate)版をテストし,そのまま使い続けよう」と発言した。

 こうした発言をきちんと読み取れば,ここまで話題になることなどないのだが。