フェムトセルを活用するサービス像としては,もう一つ「ユーザーの位置・プレゼンス情報を生かしたサービス」がある。これは,フェムトセルの「携帯電話事業者が端末を介してユーザーの位置情報を把握できる」という特徴を生かすもの。フェムトセルはセルサイズが小さいため,端末を持ったユーザーの現在位置を比較的高い精度で把握できる。GPSでは難しい建物内の位置情報も,半径10メートルほどの精度で検知可能だ。

 しかもフェムトセルは携帯電話事業者の管理下にある。このため,ユーザーがフェムトセルのエリアに入ったことをトリガーに,そのエリアに特化した情報をプッシュ配信するサービスが可能になる。

来店顧客にその場でクーポン券を送信

 こうしたサービス像については,NECがやはりFemtocells Asiaで,コンビニエンスストアの販促用途に使うサービス例として紹介した(図1)。コンビニエンスストアの店舗にフェムトセルを設置し,来店した顧客にその店舗で利用できるクーポン券をプッシュ配布するサービスである。コンビニエンスストア以外にも,ガソリンスタンド,映画館などの娯楽施設,イベント会場などにも容易に応用が利く。

図1●ユーザーの位置やプレゼンスを活用したサービス例
図1●ユーザーの位置やプレゼンスを活用したサービス例
例えばNECはコンビニエンスストアにおける購買促進に応用できると提案している。

 同様のサービスは非接触型ICカードなどを使って実現することもできる。だがフェムトセルを使えば,ユーザーには意識させることなくプレゼンス情報などを把握し,サービスに結び付けられる。

 さらにユーザーが家の中にいるというプレゼンスをとらえ,別のサービスに結び付けることもできそうだ。例えば携帯電話事業者がマンションの宅配ボックスに似たサービスを提供するとしよう。フェムトセルのプレゼンス情報からユーザーが帰宅したことを検知すれば,留守中に配達物があったことや,宅配業者の連絡先をメールで携帯に自動通知できる。

 プライバシの問題など配慮しなければならない点はあるが,付加価値サービスの可能性は広がる。様々なシーンに合わせたサービスを提供できれば,今までと違うビジネスチャンスが見えてくる。

 携帯電話事業者にとっては,付加価値サービスによる収益モデルを考えやすいという側面もある。例えば家電との連携サービスや遠隔からの制御サービスの料金を,通話や通信とは別の月額オプションとして徴収する方法が考えられる。

 通話などに関連したオプションとは異なる付加価値になるだけに,対価を得やすい。しかも,「携帯電話事業者が認証・課金機能を持っているため,家電メーカーと協業しても携帯電話事業者がよいポジションを取れる」(ソフトバンクモバイルの宮川CTO)。