社員同士のコミュニケーションの円滑化,情報の共有と交換,ナレッジの蓄積による生産性向上などを目的に,社内SNSを導入する動きが盛んだ。しかし,SNSに限らず古くは掲示板から最近ではブログに至るまで,社内でのコミュニケーション・ツールの有効活用は難しい。苦労して導入しても盛り上がらず,忘れ去られて苦い経験をした人も多いだろう。

なぜ盛り上がらないのか?

 筆者の所属する会社にもこのような苦い経験はある。数年前社内ブログを立ち上げたのだが,全く盛り上がらなかった。今,その理由を分析してみると,次の3点が挙げられる。

1.「箱もの」的な導入

 サーバーを立ち上げて,「後はよろしく」とばかりに投げっぱなしであった。利用者に対する期待感や,理想像が表明されていなかった。もちろん,コミュニケーション用サービスという「箱」を用意するだけで利用者が面白がって活発化することもあるだろうが,既存のネットサービスを活用しコミュニケーション欲を満たしている昨今のITエンジニアにとって,コミュニケーション対象が狭い社内ブログの魅力は低く映る。連載第2回で説明したtwitterなどを使い普段からコミュニケーション欲を満たしている社員にしてみれば,「これを使って何をしろと?」という感覚であったに違いない。

2.アクセスできる社員の絶対数の少なさ

 手間の関係で,このブログは社内のネットワーク・セグメントに配置され,社内のPCからしか利用できなかった。約半数が社外に常駐して作業している環境では,アクセスできる絶対数も半減してしまう。

3.トップに対する説明不足

 経営トップに対する説明と情熱が不足しており,トップもブログとどうかかわってよいのか迷ったと思われる。単に,「好きものが何か始めたぞ」と勘違いされてはいけない。なぜ,ブログを書くのか,どのような狙いがあり,それが経営にとってどのようにプラスになるのかの説明と説得が必要だ。

社内SNSを盛り上げるコツ

 筆者の勤務先では,昨年9月に社内SNSを導入した。社内ブログでの失敗の教訓も生かし,曲折と試行錯誤を繰り返した結果,現在では盛り上がりを見せている。以降では,自分たちの経験を下敷きに,社内SNSを盛り上げるための5つのコツを説明しよう。

1.SaaS(Software as a Service)の活用

 箱を買うのではなく借りる。つまり,自社内でサーバーを立ち上げず,その代わりSaaSを活用する(ちなみに私たちはSKIPaaSを利用している)。メリットは2点ある。

 まず,SaaSはネットがつながればどこからでもアクセスできるので,客先常駐の社員の参加機会を増やすことができる。このメリットが一番大きい。また,保守作業は全部お任せできるので,ハードウエアやソフトウエアといったシステムの管理ではなく,「いかに導入するかの検討」に心を砕くことができる。

 もちろんSaaSの場合,利用する限り料金を支払わなくてはならないが,これは導入の責任者からすると「盛り上げないと経費の無駄を続けてしまう。是が非でも盛り上げてやろう!」といった(良い意味での)プレッシャーがモチベーションになったことも付け加えておこう。

2.トップに対する利用メリットの説明と巻き込み

 コミュニケーションを円滑化し,組織の一体感を向上させるのはどのような組織であれ大きな課題であり,これに異を唱える経営トップは少ないだろう。導入にあたりトップを説得する際には,トップの持つ問題意識や解決イメージに対して,どのようにSNSが寄与できるのかを,具体的に説明できなくてはならない。

 私たちの場合,「全社的に小集団活動を推進する」というトップの課題に対して,「小集団活動のためのコミュニケーション基地をSNSで実現し,活動をバックアップする」と表明した。ここで言う小集団とは,「社員で構成される各種勉強会やクラブ活動の総称」である。その後のSNS利用状況を振り返ると,これら小集団メンバーによる利用は特に活発であり,「SNSによるコミュニケーション基地」は十分貢献していると評価している。