「データセンター」って言葉をよく聞くけど,いったい何のことだろう。データのセンターだから,データの中心のことかな,それともデータを置く中心となる施設のことかな? こんなふうに,「データセンター」についてはなんとなく理解しているつもりだけど,詳しく知っているわけではないという方が多いのではないでしょうか(図1)。
この連載では,一般の方にはなじみが薄そうだけれど,実は大半の人が日ごろからお世話になっている,データセンターの世界を基本から解説していきます。
データが集まっている施設のこと
「データセンター」とは,名前の通りデータ(情報)が集まっている施設のことです。昔(1980年代)は,上場企業や金融機関など大手の企業が自前の設備として持っていました。そのころは「電算センター」などと呼ばれていました。なお,データセンターの誕生経緯については,第3話と第4話で取り上げる予定です。
現在では,大手企業に限らず,中堅あるいは中小企業であっても,使用しているIT資産(電子データやネットワーク機器など)を自社内には置かず,安全な施設に預けることが一般化しつつあります。その預け先が,データセンターなのです。身近なものにたとえると,データセンターは「銀行の貸し金庫」のような役割を担っているといえます。
企業はなぜ,データセンターを利用するようになったのでしょうか。その背景には,ワークフローの変化があります。昔は,企業の帳簿や台帳(経営情報や顧客情報など)が手作業で作られて,それら書類はかぎのかかるキャビネットや金庫に保管されていました。
しかし近年,IT化が進展し,ほとんどの企業がコンピュータ(規模の大小はありますが)を使うようになりました。それに伴って,経営情報が紙から電子データに移り,システムや媒体に保管されるようになりました(図2)。
IT化で新たな経営リスクが浮上
ITの導入によって人手の作業をシステム化することにより,業務効率が大幅に高まりました。しかし,作業者の負担が軽減されたり,作業品質が向上したりするなど便利になった一方で,システムが何らかの原因で正常に稼動しなくなると,業務が止まってしまうという経営面での大きなリスクも付いて回ることになりました。
システムの稼働に影響を及ぼす要因には,例えばソフトウエアの異常動作やハードウエアの故障によるシステム障害があります。また,電源障害(夏場の電力不足,他設備の導入による電源容量不足など)や自然災害(地震によるサーバーの転倒,高波による機器の水没など)によってシステムが停止することもあります。
IT化によって,情報(データ)を書類ではなくシステムや各種媒体に記録するようになったことから,データの不正な持ち出しや漏えいも経営上のリスクとなっています。例えば,悪意のある社員が顧客情報を持ち出したり,顧客情報が漏えいしたりするといった事件が起きると,その企業は事後対応に追われることになります。場合によっては賠償責任が発生したり,信用失墜という大きなダメージを負ったりすることになります。
こうしたリスクがあるので,大切な情報(データやシステム)は厳重に保護する必要があります。しかし,それは容易なことではありません。各種の不安要素に備えるとなると,それぞれに呼応した設備が不可欠となるためです。次回,具体的にどのような設備が求められるか説明します。
リコーテクノシステムズ ITマネージド本部 EMS運用部 部長