1999年の通信関係の主な出来事

●IEEEが1000BASE-T(802.3ab)を標準化(6月)

●NTTが分割,新グループ体制に(7月)

●NTT東西がADSL接続サービスを開始(12月)

 500人以上もの報道陣が,1999年1月25日,東京・渋谷の原宿クエストホールに詰め掛けた。同会場で行われたのは,NTTドコモが同年2月22日にサービスを開始したiモードのCM発表会。報道陣の多さはイメージ・キャラクタのタレント・広末涼子に頼るところが大きかったが,携帯電話とインターネットの融合を図る画期的なサービスとして華々しい登場を飾った。

 携帯電話/PHS向けのメールや文字情報サービスは,iモードの登場前からJ-フォン・グループやアステル東京などが提供していた。iモードはこれに加え,携帯電話からインターネット上の任意のWebサーバーにアクセスできるようにしたほか,銀行預金の残高照会や振り込み,航空券やホテルの予約といったiモード用のサービスを豊富に用意することで“携帯電話の新しい利用シーン”を提示した。企業ユーザーにも商品の受発注管理やグループウエア連携などで業務への活用を促した。

わずか1年半で1000万契約を達成

 上記のような取り組みが受け入れられ,契約数は爆発的に増えた。NTTドコモの榎啓一・モバイルマルチメディア推進本部ゲートウェイビジネス部長(現:ドコモエンジニアリング社長)はこの発表会の席上で,契約数目標を「サービス開始1年間で200万~300万,3年間で1000万」とした。1998年12月末時点のNTTドコモの契約数は約2200万だったので,かなり強気な見通しである。しかし,実際の契約数は目標を上回るペースで伸びていく。契約数は約1年後の2000年2月14日に400万を突破すると,その約半年後の8月6日には1000万を達成した。

 iモードの強みはコンテンツの豊富さにある。理由の一つは,少額決済を容易に実現できるコンテンツ配信基盤を,多くのコンテンツ・プロバイダが支持したこと。iモードではコンテンツ利用料を通信料とともにNTTドコモが回収する「料金回収代行サービス」を提供する。手数料はかかるが,コンテンツ・プロバイダにとっては料金回収の手間が不要で,料金未収のリスクを回避できる。著作権保護の仕組みも備え,安心してコンテンツを提供できる。2008年6月末時点で,iモードの公式サイト数は約1万9000,ユーザー数は約4800万に及ぶ。いまや世界最大規模のコンテンツ・プラットフォームに成長した。

ADSLが破格の安さでデビュー

 1999年は固定通信でも大きな動きがあった。NTT東西がインターネット接続事業者向けに「ADSL接続サービス」の試験提供を12月末に開始したのだ。商用化では,いずれも12月末にサービスを始めた東京めたりっく通信とニューコアラが先行した。「下り最大640kビット/秒,上り最大250kビット/秒のインターネット接続が月額6300円で使い放題」という東京めたりっく通信の料金は破格の安さだった。

 当時はISDNの常時接続(64kビット/秒)が月額1万~1万3000円程度,NTTコミュニケーションズの「OCNエコノミー」が月額3万2000円だった。その後,2000年にかけてインターネット接続事業者各社がADSLサービスを相次ぎ開始した。