テレビ会議製品は,インターネットや社内ネットワークを介して,遠隔地にいる人同士がディスプレイでお互いの顔を見ながらのコミュニケーションを可能にする機器/ソフトウエアである。社員が出社できなくなったり海外出張できなくなったときでも,遠隔拠点をつないで社員同士でコミュニケーションがとれるため,緊急時に業務を止めないための手段として有効だ。

 テレビ会議製品は,実現方法や用途で大きく三つのカテゴリに分けられる。(1)パソコンを使うタイプの「Web会議システム」,(2)専用装置を使う「テレビ会議システム」,(3)部屋全体を作り込んだ「テレプレゼンス・システム」――である。それぞれを見ていこう。

手軽に導入できるWeb会議システム

 Web会議システムは,簡単に導入できるのが特徴である。自宅勤務が必要になった場合に,専用のハードウエアを各社員の自宅に設置するのは現実的でない。こうしたケースでは,パソコンにWeb会議用のソフトウエアをインストールして使えるWeb会議システムが有効である。パソコンには,市販のWebカメラとヘッドセットを接続し,個々のパソコンをWeb会議用のサーバーと連携させて映像や音声をやりとりする。

 Web会議システム製品は,端末やサーバーなどの必要な機器/ソフトウエアがセットで提供されているタイプと,ASPサービスとして提供されているタイプがある。料金は,同時接続ユーザー数やクライアント・ライセンス数などによって異なる。ASPサービスでは,これらに加えて利用時間が料金に反映されるケースがある。Web会議システムの製品/サービスとしては,NTTアイティの「MeetingPlaza」(セット提供とASP提供)やブイキューブの「nice to meet you」(ASP提供)などがある。

図1●パソコンに市販のWebカメラやヘッドセットを接続して使う「Web会議システム」 写真は,ブイキューブの「nice to meet you」。
図1●パソコンに市販のWebカメラやヘッドセットを接続して使う「Web会議システム」
写真は,ブイキューブの「nice to meet you」。
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 Web会議システムは,専用端末ではなくパソコンを使うので,データ共有機能などを充実させている製品が多い。例えば,会議の参加者がお互いにデータをやりとりしたり,参加者の一人のパソコンに入っているファイルを会議の参加者全員に見せたり共同で編集したりできる。ただし,映像や音声データはソフトウエアでエンコードするので,品質は専用のビデオ会議システムに比べてやや劣る。

 ちなみに,Webを使ったビデオ・コミュニケーションを実現する方法としては,無料で提供されているビデオ機能付きのインスタント・メッセンジャー・ソフトや音声通話ソフトを利用する手もある。スカイプ・テクノロジーズの「Skype」やマイクロソフトの「MSNメッセンジャー」,ヤフーの「Yahoo!メッセンジャー」などである。ただしこれらは,基本的には1対1の会話しかできない。また,映像や音声の品質なども市販のWeb会議システムより劣るケースが多い。

専用装置を使うテレビ会議システム

 テレビ会議システムは,実際に対面で会議をしている状態に近づけた製品である。カメラ,マイク,スピーカをセットにした専用装置をテレビやディスプレイと組み合わせて使う。前出のWeb会議システムと比べると,画質や音質を向上させているのが特徴である。カメラやマイクで集めた映像や音声を遅延なく処理するために,映像や音声をエンコードするための専用チップを搭載している製品が多い。こうして,テレビ/ディスプレイに遅延なく映像と音声を出力する。

 テレビ会議システムの利用方法は,専用端末同士を1対1でつなぎ,離れた拠点間で通信するのが基本である。会議をする際は,一方の端末からもう一方の端末を呼び出す。複数拠点で会議をしたい場合は,どこかの拠点に他地点接続装置(MCU:multipoint control unit)と呼ばれる機器を設置する。

 広めの会議室での利用を想定して,パン(水平方向への移動),チルト(垂直方向への移動),ズームといった機能を持っている製品も多い。こうしたテレビ会議システム製品としては,ポリコムジャパンの「HDXシリーズ」や日本タンバーグの「Set-top 990/880/770 MXP」などがある。

図2●専用のカメラやサーバー機器を使う「テレビ会議システム」 写真は,ポリコムジャパンの「HDXシリーズ」製品群。
図2●専用のカメラやサーバー機器を使う「テレビ会議システム」
写真は,ポリコムジャパンの「HDXシリーズ」製品群。
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