1995年の通信関係の主な出来事

●NTTが深夜から早朝の通話料を定額とする「テレホーダイ」を開始(8月)

●NTTがATM技術を使う6Mビット/秒のセル・リレー・サービス開始(9月)

●マイクロソフトがパソコン用OS「Windows 95」を国内販売(11月)

 インターネットの普及を牽引する二つのソフトウエアが,1995年には国内で浸透し始めた。パソコン用OSの「Windows 95」(写真)とWebブラウザの「Netscape Navigator」である。

 Windows 95が国内で発売されたのは11月23日。東京・秋葉原など各地の電気街では,複数のパソコン店が発売を記念する深夜イベントを開催した。午前0時のカウントダウンとともに,Windows 95の商品ケースや同OSの搭載パソコンが並んだ店頭に多くの人々が殺到した。

 Windows 95の目玉機能の一つが,インターネットへの対応であった。従来のWindows 3.1は標準でネットワーク機能を持たず,別途通信ソフトを組み込む必要があった。Windows 95では初期状態でTCP/IPプロトコルを搭載しており,プレインストールしたパソコンであれば,ダイヤルアップ接続機能やWebブラウザも付属していた。

 単に操作性を改良しただけでなく,当時はまだ珍しかったインターネットが体験できるという付加価値が,多くのユーザーを引き付けたのである。

Navigatorが標準ブラウザに定着

 当時,インターネットへの注目が集まり,大きな潮流となった一つの要因が,Webブラウザの発展だ。Webれい明期のブラウザ「Mosaic」の開発者たちは,米ネットスケープ・コミュニケーションズを設立していたが,95年3月には日本法人を立ち上げ,日本語に対応した「Navigator 1.1」の配布を始めた。最新のHTMLに対応し,操作性が高いことから,標準的なWebブラウザとして定着していった。

 Navigatorの席巻に対抗姿勢を見せたのが米マイクロソフトだ。8月には独自のWebブラウザ「Internet Explorer」を投入。当初は表示機能が劣るなどで敬遠するユーザーもいたが,その後の数年間はNavigatorと機能強化の競争を繰り広げ,結果としてネット技術の発展を促した。

料金の安いPHSに期待がかかる

 モバイルの分野では,PHSの公衆サービス開始が話題となった。7月にNTTパーソナル通信網グループとDDIポケット電話グループが首都圏や北海道でサービスを開始。10月には電力会社系のアステル・グループも続いた。

 PHSは利用料金の安さから幅広い層に普及すると期待された。通話料金は市内3分40円と公衆電話並みで基本料金は2700円。当時の携帯電話は,基本料金だけで7000~8000円だった。

 期待は大きかったものの,サービス開始当初の利用者数は伸び悩んだ。95年12月の時点でPHS事業者が獲得した合計の利用者は約60万人。同時期で800万人に到達していた携帯電話とは,大きな差があった。

 理由は通信できる範囲の狭さにあった。サービス開始当初は基地局の整備が進まず,都市部でもサービス・エリアが“虫食い”状態になっていたのだ。PHSの目玉機能の一つである高速データ通信も年末に一部の規格が固まったものの,開始時期のめどが見えなかった。以降は通信範囲も広がり,徐々に加入者を増やしていくが,95年は生みの苦しみが続いた。