次期クライアントOS「Windows 7」の製品候補(RC:Release Candidate)版が,米Microsoftからついに公開された。大きな注目を集めるWindows 7がいよいよ開発の最終段階に入ったことから,同製品に関する賛否両論の意見が次々と聞かれるようになってきた。

Take1:Windows 7はVistaに比べて速くないのか?

 Windows 7の製品候補版を使ったユーザーは,ほぼ例外なくよい印象を持っただろう。特にパフォーマンスには感銘したと思う(関連記事:Windows 7の日本語RC版をインストールしてみた)。

 ただし,1つだけ問題がある。実際にWindows 7を使った人が「『Windows Vista』よりはるかに高速」としているにもかかわらず,Windows 7 RCをベンチマーク・テストして初の信頼できるパフォーマンス調査記事を掲載した米PC World誌は,「Windows 7はわずかに高速化したが,ユーザーはその差にまず気付かないだろう」という予想外の結論を出した。同誌によると,Windows 7のパフォーマンスが5%以上Windows Vistaを上回ったテストはなかったという。

 筆者はここで2つ指摘しておく。まず,Windows Vistaのパフォーマンスは多くの評判ほど悪くない。そして,同誌が実施したようなベンチマーク・テストは,実環境のパフォーマンスを計測するものではない。つまり,今回はベンチマーク・テスト・アプリケーションのパフォーマンスを測ったのだ。言い換えれば,Windows 7上で動くアプリケーションを計測するベンチマーク・テストを行ったのであり,Windows 7そのもののパフォーマンスは調べていない。

 一言で済ませれば,この調査記事に見るべきところはない。

Take2:Windows 7がお気に召さないMozilla

 Windows 7によい印象を持っていない人物(少なくとも3人か4人はいるだろう)といえば,米Mozilla Foundation会長のMitchell Baker氏が挙がる。同氏は2009年5月第2週,「Windows 7は,何らWindows/『Internet Explorer(IE)』抱き合わせ販売問題の解決策にならない」と述べたのだ。なお,Mozillaは欧州連合(EU)による対Microsoft独占禁止法(独禁法)違反訴訟に参加している。

 同氏はWindows 7について,「Webブラウザ利用シェアの力関係を変えるという目的がはっきり見える」と述べた。このような発言をするとは,欧州ではWindowsユーザーの5割がIEを「Firefox」のダウンロードにしか使っていない,という調査結果を見逃していたに違いない。

 正確な情報に照らし合わせてみれば,こうした発言のばかばかしさがよく分かる。

Take3:Microsoft,EUのWindows/IE抱き合わせ販売訴訟でGoogleを引き合いに

 Microsoftは6月に行われるEUのWindows/IE抱き合わせ販売訴訟における口頭弁論で,思わぬ対抗策を繰り出す。同社は「WindowsからのIE削除を命じられたり,万が一にもWindowsへの競合Webブラウザ搭載を強制されたりすると,ライバルである米Googleによるオンライン検索市場の支配体制が強化されるだけ」と主張するのだ(関連記事:MicrosoftのWindows/IE抱き合わせ販売問題,ECが回答期限を1週間延期)。

 IEと競合するGoogleとMozillaのWebブラウザは,Googleの検索サービスを利用した人のクリックするオンライン広告サービスが唯一の収入源だ。仮にWindowsにGoogleの「Chrome」かMozillaのFirefoxをバンドルさせると,実質的にはEUがGoogleの主要事業を推進してしまう。というのも,ChromeやFirefoxのユーザーが検索するつどGoogleに金が入る,という仕組みにつながるからだ。

 Microsoftの指摘はもっともである。