デバッグはプログラミングにとって避けて通ることのできないプロセスでありがながら,そのノウハウはこれまであまり共有されることがなかった,と著者のひとり吉岡弘隆氏は言う。本書は,そのあまり語られてこなかったデバッグのノウハウをまとめた本である。
著者は,いずれもLinuxカーネルの開発にかかわっているエンジニアたち。本書の内容はデバッガ(GDB)の基本的な使い方,Intelアーキテクチャの基本,アセンブリ言語の勉強法といった入門から始まり,カーネルメッセージの取得方法,カーネルクラッシュダンプの採取,カーネルパニックやカーネルのストールへの対処,kprobesやsystemtapなどのツールの活用,フォルト・インジェクションの利用など高度な実践ノウハウまでをカバーする。
本書で書かれたHackは,実際に仕事で遭遇した事例をもとに書かれたという。デバッグは10人いれば10通りの方法がある属人的な作業であると吉岡氏は言う。我々の方法よりももっとよい方法があるはずだと。そして,本書をきっかけに,デバッグのノウハウが多くのエンジニアにより発信され,広く共有されることを願う,と話す。
実際に著者らは「Debug Hacks Conference 2009」と呼ぶセミナーを開催,著者らのほか,Ruby 1.9のメンテナであるYugui氏を招き,それぞれのデバッグに関するHackを披露した。
Debug Hacks Conference 2009の模様はニコニコ動画などで見ることができる。
・Debug Hacks Conference 2009(ニコニコ動画)
また本書には,まつもとゆきひろ氏が序文を寄せている。「バグ」という言葉の由来からデバッグという行為の意味を語るまつもと氏の序文は,オライリー・ジャパンの本書のページで読むことができる。
・Debug Hacks(オライリー・ジャパン)
Debug Hacks
吉岡 弘隆/大和 一洋/大岩 尚宏/安部 東洋/吉田 俊輔著
オライリー・ジャパン発行
3360円(税込)