NTTぷららが提供する「ひかりTV」を受信するためのセットトップ・ボックス(STB,NTT東日本の「Picture Mate 700」)を,筆者宅(東京都中野区:戸建て住宅)のフレッツ光用ルーター(NTT東日本の「PR200NE」)に接続して実際にサービスを利用してみた。

HDTVの有料放送が充実,画質も従来のSDTVと一線を画す

表1 通常の月額基本料(2008年12月9日の発表資料より)
表1 通常の月額基本料
(2008年12月9日の発表資料より)
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 ひかりTVは,NTT関連の映像配信サービスとして提供されてきた「OCNシアター」「オンディマンド TV」「4th MEDIA」を統合・リニューアルして,2008年3月31日から提供を始めた総合映像サービスである。ケーブルテレビとの最も異なるのは,すべての映像サービスがIPにより提供されていることである。2008年度末には加入者が50万世帯を突破するなど,この1年で大幅に事業規模を大きくしている。

 また,東名阪を中心に地上デジタル放送のIP再送信エリアも少しづつ広がってきており,その認知も上がってきているという。料金プランは表1(さらに詳細な内容はこちらを参照)の通りだが,「お値うちプラン」の月額3675円という価格は,スカパー!などの衛星放送やケーブルテレビとの価格競争力がかなり高くなってきているようだ。

 ベーシックチャンネルは46チャンネルある(その他,同社提供のコミュニティー的なチャンネルやショッピングチャンネルなども視聴可能)。特にデジタル・ケーブルテレビなどではペイテレビとして提供されていることが多い「囲碁・将棋チャンネル」「日本映画専門チャンネル」「KBS World」などがベーシックとしてある点は,サービス提供側が様々な視聴者の要望に応えようと努力している姿を感じさせる。

 海外の衛星放送を直接受信しないと視聴できないような「TV5MONDE」(フランス語国際放送局)もある。さらには,スカパー!では提供されていないHDTVチャンネルとして「ムービープラスHD」「洋画★シネフィル・イマジカHD」「ザ・シネマHD」や「MONDO21HD」「旅チャンネルHD」などを,追加料金なしで視聴できることは特筆に値しよう。音楽や海外ドラマなどのラインナップも数多い。

図1 筆者宅での実験の様子(使用モニターはシャープの46型液晶テレビ「AQUOS LC46RX5,実験に使用したNTTぶらら支給のセットトップ・ボックス)
図1 筆者宅での実験の様子
使用モニターはシャープの46型液晶テレビ「AQUOS LC46RX5,実験に使用したNTTぶらら支給のセットトップ・ボックス
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 ひかりTVとスカパー!の両方でHDTVチャンネルが提供されている「FOX HD」の画質を確認した(図1)。スカパー!はソニー製のHDTV受信機からのHDMI出力をテレビにつないだ。両放送とも映像圧縮フォーマットとして「MPEG4/H.264 AVC」を使用している。従来から提供されている東経110度CS放送(SDTV放送)のスカパー!e2と見比べると,SDTVからHDTVになる分だけ,かなりの画質向上が確認できた。

 一方,両者のハイビジョン放送の間では,少なくとも筆者宅の視聴環境ではその差はほとんど感じられなかった。米国の人気番組である「アメリカン・アイドル」はピュアHDで製作されている。出演者の熱唱ぶりが伝わってくるHDTV映像ならではの質感がある(ただし点滅した赤や青といった照明下での歌唱シーンでは若干のコマ落ちが認められた。これは回線の関係かは不明である)。J:COMなどのデジタルケーブルテレビに加入しなければHDTVで視聴できない「ディスカバリーチャンネル ハイビジョン」も,自宅の視聴環境で初めて接した。ドキュメンタリーというジャンルはHDTVでこそソフトパワーが活きると実感した。昨今の民放系BS局が力を入れるのもうなずけるものといえよう。