筆者は、国際会計基準(IFRS)に関するプロジェクトチームに携わっている。といっても、日経BP社の会計基準をIFRSに移行するためのプロジェクトチームではない。IFRSをテーマとしたムックやセミナーを手がけるチームだ。例えば、こんなセミナーを手がけている。

 リフレッシュルームや喫煙室など様々な部署の人が集まる場所で、セミナーの企画書やムックの校正紙を持ち込んでチェックしていると、自然とIFRSの話になることが多い。IFRSへの注目度が高まっている表れだろう。

 その中で、よく出てくるIFRSに関する「素朴な疑問」がいくつかある。リフレッシュルームでの会話なので、居酒屋談義に近いものかもしれないが、これをお読みの皆さんも感じている疑問もあるかもしれない。ここで6つの疑問をまとめてみよう。

Q1 IFRSの読み方は「アイファス」? 「イファース」?

 IFRSは先頭の文字が母音で、後は子音だけなので、どう発音すればよいのか分かりにくい。「アイファス」「イファース」「アイ・エフ・アール・エス」など、様々な読み方が考えられる。実際、監査法人やコンサルティング会社の方のお話を聞いていても、いろんなケースがある。

 正式な調査をしたわけではないが、筆者の感触では、1年ほど前まではアイファスと言っている方が多いような気がする。しかし、最近ではイファース派が随分と勢力を広げているように感じる。

 先日、5月に発行するムックに掲載するインタビュー記事のために、IFRSの会計基準を策定する国際会計基準審議会(IASB)の理事で唯一の日本人である山田辰己氏を取材した。その折に、IASBでは何と発音しているのかを聞いてみた。IASBの方が言うことが正解だろうと考えたのである。

 山田氏によると、今ではイファースまたはアイ・エフ・アール・エスと言っているとのこと。昔はアイファスと言う方が多かったが、国際財務報告解釈指針委員会(IFRIC)という組織が設立されてから、アイファスと言わなくなったそうだ。

 もし、IFRSをアイファスとすると、IFRICは「アイフリック」となり、「I xxxx you」という禁句と似てしまうからというのが、その理由である。ちなみに、山田氏は「アイ・エフ・アール・エス」とおっしゃっていた。

 つまり、現在の読み方としてはイファースまたはアイ・エフ・アール・エスが一般的ということになる。ただし、IASBもかつてはアイファスと言っていたことを考えると、正解は特にないと考えてよいだろう。

Q2 IFRSの邦訳は「国際会計基準」? 「国際財務報告基準」?

 IFRSを取り上げた日本語の文書では、IFRSの邦訳として「国際会計基準」とするケースもあれば、「国際財務報告基準」とする場合もある。IFRSの正式名称は「International Financial Reporting Standards」なので、直訳すれば「国際財務報告基準」となる。

 Q1と同様に、IFRSの邦訳にも正解があるわけではない。企業や団体がそれぞれ、IFRSをどう表記するかを決めているのが現状である。

 マスメディアでは、国際会計基準と表記するケースが多い。日本経済新聞社でも、IFRSは国際会計基準と表記する。

 これに対し、会計のプロフェッショナルは国際財務報告基準という表記を使う傾向にある。日本の会計基準を策定する企業会計基準委員会(ASBJ)でも、IFRSは国際財務報告基準としている。ただし、金融庁では国際会計基準を採用している。

 会計のプロフェッショナルが、国際財務報告基準と表記することには理由がある。これはQ3で説明する。