ここまでの4回の連載で,「センシング」「共感」「演出」それぞれのコミュニケーションスキルの生かし方について,具体的な取り組みを説明してきた。今回は,これら3つを総動員する濃密なコミュニケーションの場,「合宿」を成功させるための原則について説明しよう。

なぜ合宿か?

写真●筆者も参加したチーム内合宿のワンシーン
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 IT業界では,「開発合宿」と呼ばれる集中してソフトウエアを作り上げることを目的とした合宿が知られる。今回はこれを一般化し,業種を問わず行なわれる「集中検討を目的とした合宿」を想定して話を進める(写真)。

 一口に「集中検討」といっても,いろいろある。具体的には次のようなシチュエーションが想定できるだろう。

・新たなビジネステーマを模索するため,部署内のリーダーを集める
・プロジェクトで開発する製品のコンセプトを決めるため,主要メンバーを集める
・プロジェクトのビジョンを共有するため,メンバーを集めキックオフする

 集中検討は合宿せずとも実施できる。社内で会議室を貸し切れば済む話だ。しかし,なぜ合宿なのだろうか?合宿のメリットは何か?と問われれば,次の3つの理由が挙げられる。

1. 環境を変えることによる気分転換
2. 邪魔が入らず集中できる
3. 濃密なコミュニケーションで参加者の結束力を高める

 集中検討合宿の目的は「問題解決」というよりむしろ「問題作り」だ。目の前の問題・課題を解決するよりは,「私たちは何がしたいのか」「これから先どうしていくのか」といった未来形の話題を多く扱うことになる。そのためには参加者の自由なアイデアを多く引き出しつつ,さらに検討結果を行動に移すための成果を残さなくてはならない。

 合宿は,「気分を変える・集中する・結束する」ことを容易にする。そのため主催者としては場作りを行ないやすい。上手に運営すれば,参加者の潜在的なアイデアを引き出し,生産的な時間にすることができる。

実り多い合宿にする5つの原則

 ここまでは一般論である。また,一口に集中検討合宿と言っても,ひとくくりにハウツーを語れるものでもない。検討する内容や手はずは実際に合宿を行なうチームにより様々であり,完ぺきなマニュアルなど存在しない。

 そこで以降は,「実り多い合宿にする5つの原則」と題して,筆者が普段合宿を企画・実施するに際して心がけていることのエッセンスを紹介していこう。