商談の“川上”にかかわる意識を植え付ける
日本ユニシスもアラサー世代の営業に、自分の営業手法を見直す機会を用意している。教育対象である営業担当者が過去の商談活動で、どのような行動を取っていたかを精査する。これを「事前の顧客分析」や「初回訪問」「キーパーソンからの情報収集」など、商談の各ステップごとに実施するのである。
行動したかどうかだけでなく、「商談相手がどのような状況の時に電話をかけたのか」といった詳細な行動も確認する。これを踏まえて、「顧客との商談を、より上流から始めるために、どのような行動が必要だったのか」を、一人ひとりの担当者に考え抜かせるのだ。
日本ユニシスは2009年6月の導入に向け、詳細なプログラムを策定中である。まず4年目以降の営業担当者20人程度を対象に実施する方針だ。
「このやり方で商談の成約率や収益性が高まるということを、まずは体感してもらう。これにより担当者自身が醍醐味を感じて成長するようになるはずだ」と、亀山課長は期待している。
営業担当も技術担当も一斉にロールプレイ
日立電子サービスが取り組んでいる部門横断型の「ロールプレイ」も、アラサーに自分自身を評価させ、気付きを促すためのものだ。2007年から横浜支社で年1回実施しており、今後は全社展開を検討している。
日立電子サービスのロールプレイでは、主にグループリーダー以下の社員が参加。社内外の講師が扮する顧客の情報システム部長や経営陣にソリューションを提案したり、価格交渉したりする。
これをビデオ撮影し、講師とともに確認。明確になった課題については、1年間のアクションプランに盛り込むことを各社員に義務付けている。これにより、自分自身の課題を明確に意識させる。
営業研修にロールプレイを取り入れる企業は、営業部門に限定していることが多い。日立電子サービスの特徴は、開発部門、保守サービス部門の社員にも、商談を疑似体験させていることだ。
「営業だけでなく開発や保守サービスの若手・中堅社員にも、顧客の潜在的なニーズを的確にとらえてビジネスにつなぐセンスを養わせたい」と、宮下修作ソリューション営業部部長は狙いを語る。
成果も出てきている。営業、開発、保守サービスの各部門が活用している顧客情報の共有システムで、情報の登録件数が急増したのだ。以前は月100~200件程度だったが、2007年に最初のロールプレイ研修を実施した直後から月400件に増えたという。
「顧客のシステム担当者が漏らしたささいな一言が、新たなソリューション提案のヒントになる場合がある。こうしたことを、保守サービス担当者が営業活動のロールプレイを体験したことで実感したようだ」(宮下部長)。