今後のネットワーク化を後押しする上で不可欠となるデータ配信方法などの統一化と視聴状況を測定する業界統一基準の策定も徐々に進んでいる。デジタルサイネージコンソーシアムが中心となり,既にデジタル・サイネージを展開中の各社を含めてこれら課題解決に向けて動き出した。

ガイドラインの策定が進む

 デジタルサイネージコンソーシアムは2008年11月,「デジタルサイネージ標準システムガイドライン 1.0版」(以下ガイドライン)を公開した。デジタル・サイネージのメディア価値を高めるためには,異なるメーカーの表示機器などを共通のインターフェースでネットワーク化し,多様なサイズ/解像度のディスプレイに対して,コンテンツや広告を効率的に配信する仕組みが必要となる。また配信スケジュールや表示有効期間などの指定方法が統一化されていれば,コンテンツ管理などが容易になる。

 ガイドラインでは,例えばコンテンツに持たせる属性情報として,「視聴制限」,「コンテンツ種別」,「ファイルサイズ」などが検討されている。また配信側が表示を依頼する際の情報として,表示するプレーヤ情報や表示日時情報,表示有効期間情報などの属性情報などが検討されている。

 ただし,ガイドラインに示されているのは必要とされる項目などで,実装についての規定はない。現在NTT持ち株会社や電通などが実証実験をしている段階である。

NTTが統一規格を後押し

 例えばNTTは,全国の看板をネットワーク化して複数のディスプレイに広告を配信できる管理システムを開発。ガイドラインに沿った形で,NTTがコンテンツ配信制御インターフェースを策定し,コンテンツを配信可能な場所と時間の空き枠情報,それを基にした配信スケジュール情報,スケジュール通りに配信されたか否かを通知する情報──などの機能を提供する。これらの記述を共通化したメタデータを使うことで,最適化されたターゲティング広告を出せるようにする仕組みだ。

 このほか,NTTグループでは,デジタル・サイネージを活用して広告に香りを持たせる「Spot Media with 香り通信」をNTTコミュニケーションズが手がけていたり,予備校などをネットワーク化して受験生向け情報を配信する「CampusChannel」をNTTレゾナントが手がけるなど,既に六つのサービスを展開中(表1)。グループ全体でNGNのキラー・コンテンツと位置付け,関連の最新技術やビジネスモデルを開拓する。

表1●NTTグループのデジタル・サイネージに対する取り組みの例
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表1●NTTグループのデジタル・サイネージに対する取り組みの例

 もう一つの課題である視聴測定は,画像認識技術の応用が期待されている。ただし,プライバシーなどの観点からその利用には制限がある。この点を配慮し,広告の視聴測定に最低限必要となる「何人が見ているか」を測定する技術の実証実験(図1)が進められている段階だ。

図1●広告効果の測定実験<br>ディスプレイの前に何人いるのか,また,何割の人が画面の方を向いているかを画像処理によって計測する。
図1●広告効果の測定実験
ディスプレイの前に何人いるのか,また,何割の人が画面の方を向いているかを画像処理によって計測する。
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