デジタル・サイネージの事例としては,JR東日本企画の「トレインチャンネル」が有名だ。山手線,中央線,京浜東北線の車両内ディスプレイを,ミリ波や無線LANによってセンター側の配信設備と接続し,サーバーに蓄積した動画などのコンテンツを配信する手法で情報番組や広告などを展開。現在,週に約5000万人が視聴する。

HSDPAで高速かつ低コストで展開

 JR東日本企画がトレインチャンネルの次に手がけているのがデジタルポスターである(図1)。同社は2006年12月から駅構内の天井などにトレインチャンネルと連動したコンテンツを配信する「ステーションチャンネル」と呼ぶデジタル・サイネージを新宿駅と渋谷駅で展開しているが,今後はデジタルポスターに軸足を置いて駅構内のメディア開発を展開する。

図1●JR東日本企画のデジタルポスターのシステム概念図
図1●JR東日本企画のデジタルポスターのシステム概念図
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 ステーションチャンネルは有線のアクセス回線を利用していたため,駅構内に回線を引き込むコストなどが高かったという。だが,デジタルポスターはアクセス回線としてHSDPAサービスを採用。駅構内の視聴は静止画であり,1枚当たりの容量は1Mバイト程度。これを土日に一括配信するため,HSDPAの伝送速度で十分と判断した。さらに駅構内では無線LANを利用することで,ケーブルを敷設するコストも削減できる。

 現在,デジタルポスターは東京駅でサービス展開している。トレインチャンネルが車両内での動画配信という手法を取るのに対し,デジタルポスターは通行人が行き交う駅構内で静止画を配信する。車両内ほどの注目を集めるのは難しそうだが,駅構内の待ち合わせ場所などに設置することでメディアとして成立すると判断。今後は東京駅以外での展開も視野に入れる。