よく新規投資と運用費用の比率が話題になる。投資の活性度を表すことには1つの意味があるかもしれない。しかし、この比率は業態に大きく影響されると思う。情報システムはモデルを具現化しているものであるから、モデルが変化すれば新しい情報システムが必要になり新規投資が生まれる。モデルの変化が緩慢であれば、情報システムの構築や改変ニーズも低いはずである。

 ビジネスには伝統的な手法でリアルなビジネスを行うものもあるし、新しいモデルを次々と打ち出していくバーチャルなビジネスなど様々な形態がある。前者は製造業や建設業、運輸、小売業などが該当し、比較的モデルが変わりにくい。後者は金融や証券、サービス業など新しい形態のサービスが差別化要素となり、インターネットを背景にバーチャル・ビジネスが進化している。

 このようにビジネスの形態の違いを考えれば、後者のほうがシステムの更新や新規投資が多いことは想像がつく。また売り上げに対する情報コストも総じて高い。従って、新規投資と運用費用の比率を一義的に論じ、日米との安易な投資比較論や新規投資率が低い企業があたかも情報投資に消極的であるようにとらえるのは妥当ではない。事業モデルが伝統的で、情報システムのデザインがしっかりされていれば、ほとんどが運用費用になっていてもおかしくない。

 システムの更新がむしろIT(情報技術)の進化によって余儀なくされている面がある。ハードウエアの保守期間が制限されたり、ソフトウエアやOS(オペレーティング・システム)の販売中止やバージョンアップによって既存システムの改修が必要になったり、継承性が損なわれたりすることによる無駄な投資も少なくない。ライセンス契約においてライセンサーが一方的な制限を強要している問題が表立って取り上げられることは少ないが、多くのユーザー企業が感じていることだろう。独占禁止法など商品取り引き上の問題もさることながら、ライセンサーには継承性や長期サポートに配慮してもらいたいものだ。