2009年上半期のネットワーク分野で,最も大きな話題となったのはモバイル・ブロードバンド・サービスの進展だ。

写真1●「UQ WiMAX」試験サービスの開通式
写真1●「UQ WiMAX」試験サービスの開通式
[画像のクリックで拡大表示]

 まず2009年2月26日に,UQコミュニケーションズがモバイルWiMAX技術による「UQ WiMAX」の試験サービスを開始した(写真1)。試験サービスは約5000人のモニター・ユーザーに提供し,7月1日には本番サービスに移行する計画である。

 通信速度は,理論値としては下り最大40Mビット/秒,上りは最大10Mビット/秒。しかし実効速度は,そこまでは速くない。実際に実効速度を計測したところ,屋外では下り10数Mビット/秒以上,屋内でも条件の良い場所では下り数Mビット/秒を記録した。

 今夏には,インテルのWiMAXモジュールを搭載したノート・パソコンが登場する見込み。また,インターネット接続事業者(ISP)などが,MVNO(仮想移動体通信事業者)としてモバイルWiMAXサービスを提供する意向を示している。サービス・エリアは,7月1日以降もそれほど急激に広がるわけではないが,利便性の高いモバイル・ブロードバンド・サービスとして人気を博しそうだ。

【関連記事】
UQ WiMAXの試験サービス開始,基地局を増やして真のブロードバンド目指す
UQ WiMAX端末の実機で接続スピードを検証,屋内での電波減衰が弱点か
最速は池袋?東京の名所でWiMAXをテスト
UQがWiMAX経由でネット接続できる無線LANアダプタ,無料モニターも募集
【特集】ついに試験サービス開始!UQ WiMAXの全貌に迫る
【記者の眼】モバイルWiMAXサービスは“買い”か?
BIGLOBE,モバイルWiMAXサービスをMVNO方式で提供
ニフティがモバイルWiMAXをMVNO方式で提供,有償サービスは7月から

 一方,同じ2.5GHz周波数帯の免許を受けたウィルコムは,次世代PHS「XGP」の試験サービスを4月27日に開始した。ただし,こちらはUQ WiMAXに比べて試験規模は小さい。試験に参加できるユーザーは,MVNOのパートナー企業や一般企業のモニター約500人のみ。当面,一般ユーザーは参加できない。エリアも東京の山手線内の一部地区のみとなっている。本番サービス開始は10月を予定する。

 サービス開始時のXGPの提供エリアは,UQ WiMAX以上に狭くなることが予想される。そこでウィルコムは,XGPが広まる2012年12月末までの“つなぎ”サービスとして「WILLCOM CORE 3G」を投入した。これは,NTTドコモの携帯電話網をMVNOとして活用したデータ通信サービス。まずは,下り最大7.2Mビット/秒の法人向けサービスを4月9日に開始した。

 なお以前のウィルコムは,「次世代PHS = WILLCOM CORE」と位置づけていたが,現在は,次世代PHSだけでなく3G,従来のPHS,無線LANと複数の通信手段を利用して快適に通信できるサービス全体をWILLCOM COREと位置づけている。そして,単独サービスとしての次世代PHSはXGPと称する。「次世代PHS」という呼称そのものの,「すでに次世代ではない」という立場から,自らでは使わなくなっているのが現状だ。

【関連記事】
ウィルコムが「XGP」試験サービス開始,一般ユーザーは募集せず法人限定
ウィルコム,ドコモ網をMVNOで活用したデータ通信サービスを開始
ウィルコム,次世代PHSサービスで携帯電話の3G網も利用可能に
次世代PHS改め“XGP”を海外に推進,XGPフォーラムが発足
「次世代PHSとは呼ばないで」,XGPフォーラム設立会見より
[ウィルコム]MVNOの裏に売却話,次世代PHSに不安