オラクルのサン・マイクロシステムズ買収は、大型M&A(企業の合併・買収)に慣れているIT(情報技術)産業界を驚かせた。創業来ほとんどソフトウエア専業でやってきたオラクルが、創業来ほとんどハードウエア専業でやってきたサンを買ったからだ。はたしてこの買収は成功するのか。日経コンピュータの谷島宣之編集長が周囲の記者数人をつかまえ、問い質した。本欄に名前が出ることを好まない記者が増えたため、複数人のコメントがあったものの、発言者をすべて「記者」と表記した。

谷島 サンの身売りを巡っては当初、IBMが名乗りを上げていた。急転直下、オラクルが買い手となったのはなぜか。

記者 価格で折り合わず、いったん物別れになっていたところ、一気にオラクルが話を付けたようですね。びっくりしました。

谷島 そんな経緯は分かっている。なぜ、オラクルなのか。

記者 創業者のラリー・エリソン会長は、「アプリケーションからデータベース・ソフト、そしてサーバーからストレージまで、すべてを提供できる企業になる」と豪語しました。IBMやヒューレット・パッカード(HP)はアプリケーション・ソフトをほとんど手がけていませんし、マイクロソフトやSAPはハード事業がない。オラクルはコンサルティングなどサービス事業も結構やっていますから、確かに全部持つことになります。

谷島 エリソン会長は激しい性格の人だから、胸を張ってそう言うだろうけれど、はたして正しい経営判断なのか。

記者 少なくとも、サンの売り上げが加わりますから、売り上げは増えます。

谷島 サンは赤字が続き、単独では生き残りが厳しいと判断したからこそ、身売りを考え出した訳だろう。IBMやHPがサンを買うなら分からないでもない。サンのサーバー顧客に対し、自分のサーバーを提案できるから。カスタマーベースを買う、という訳だ。しかし、オラクルが買ってもお荷物を背負い込むだけではないだろうか。それともオラクルが買うと、サンのハード事業が良くなる秘策が何かあるのか。さっきから、何が狙いなのか、と聞いているのはそういうことだ。

記者 少し前、オラクルはHPからハードを調達し、自社ソフトと組み合わせたハード製品を出しています。データベース処理を速くした専用機という位置付けです。特定用途を狙ったこういう製品をアプライアンスと呼んだりします。こうしたアプライアンス事業を強化したかったのではないでしょうか。処理性能の向上を追及していくと、最後はハードまで手を出さないといけなくなってきますから。