山下淳一郎(やました じゅんいちろう)
株式会社アイ・エム・ジェイ
Webマーケティングコンサルタント
山下淳一郎(やました じゅんいちろう) 1997年からインターネットに携わり,多くの大手企業のWebサイトを手がける。顧客視点に根ざされた彼の戦略立案は,多くのクライアントから高い評価を得ている。また,脳生理学理論を取り込んだ独自のマーケティングやWebサイトコーチングのセミナー講師としても活躍し,Web担当者が必要とするスキルをプログラムにした講座も手がけている。

 Webサイトは,チーム(組織)で構築します。インターネットの黎明期には,一人のスペシャリストがサイトを構築していましたが,現在は,Webサイトはチーム(組織)で構築します。これは前回触れた通りですが,今回は,「何を実現すべきか」,「どのように実現していくのか」という視点でお話を進めたいと思います。

何を実現すべきか

 「何を実現すべきか」。これを一言で表すならば「戦略」です。戦略は,実現するもの(ミッション)からスタートし,実行計画(アクションプラン)に至るものです。

 ここでいう戦略とは,顧客のニーズに始まり,顧客の満足に終わるものです。戦略の成否は,成果を出せたかどうかにかかっています。成果とは,顧客の満足によって得られた価値です。

 ここで,はっきりとお伝えしておきたいことは,Webサイトの最終目的は,構築することではないということです。最終目的は,Webサイトによって産み出される成果そのものです。

 成果というと,アクセス数の向上やPV数の向上と言ったものを常に耳にしますが,それらは,成果を測る数値であって,成果そのものではありません。具体的に言うならば,成果とは,

  1. 資料請求の増加(100件が300件になった)
  2. 会員登録数の増加(10000人が15000人になった)
  3. リピーターの増加(500人が800人になった)
  4. 売上の増加(10億円が15億円になった)
  5. 運用コストの削減(300時間が200時間に短縮できた)
  6. 最新情報の更新頻度の増加(1日1回が1日3回に増加できた)
  7. 不要な問い合わせ件数の減少(1日20件が1日3件になった)
  8. 有効な問い合わせ件数の増加(1日20件が1日40件になった)

など,顧客とWebサイトの所有者,双方の利益に直結するものです。

 顧客を知ることによって,いかなる成果を得られるかが明らかになるはずです。そこから,何を実現すべきかが,おのずと導き出されてきます。ゆめゆめ,Webサイトを構築することが最終目的にならないようにしてください。顧客を知り,何を目的としているのかを導き出し,そのためには,何をすればよいかが重要なのです。

どのように実現していくのか

 チームを作り,チームで仕事を進めなければ,プロデューサーが優秀であってスタッフも優秀かつ献身的であっても,Webサイトの構築は失敗してしまいます。否,構築をスタートさせることすらできません。

 ここでいうチームとは組織構造の箱を作るということではなく,情報とコミュニケーションを中心に組み立てられた専門知識のコラボレーションという意味合いです。コラボレーションするためには,有機的な連結が求められます。

 チームのカタチは,プロジェクトの内容に応じてスタッフィングされた場合や,固定されたチームなどさまざまなケースがあります。いずれにしても,チームは自動的に育つものではありません。

 プロジェクトの内容に応じてスタッフィングされた場合に限って言えば,チームを作るときに,個々人の個性やスキルを起点として検討する制作会社も多いようです。しかし,チームを作るには,タスクから始めなければなりません。

 Webサイトの構築では,ワークフローが必要不可欠であり,チームが組織として機能するためには,系統だったルールが必要です。Webサイトは,印刷物のように工程が標準ではなく,一品一様だからです。クライアントの目的,予算,成果,それらすべてにおいて,一つとして同じものはないと言ってよいでしょう。

 ゆえに,オーケストラで言うところの楽譜に相当するものが必要です。自分が仕事を進めるためには,いかなる情報を,いつ,誰から,どのようなかたちのアウトプットで手に入れるか。また,他の人が仕事をするためには,どのような情報を,自分から,いつ,どのようにアウトプットするか。それらをチーム全員で,取り決め,確認し,把握しておく必要があります。

 聞けばごくごく当然のことですが,意外にも現実は,この点が軽視されるために,プロジェクトの進行中に,不要な行き違いがしばしば発生します。それは,一つの同じ情報であっても,仕事の内容に応じて,必要とする中身がそれぞれ異なり,重要とする情報もまた異なるためです。

 広報担当の方々は,Webサイトで成果を出すために,何を実現すべきか,どのように実現していくのか,この2点をよく見極めたうえでパートナーと二人三脚で進めていくことを強くお薦めします。