ブレードサーバーの普及とともに,「SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)」の導入が進んでいるが,これまでSANに触れてこなかった技術者は少なくない。そこで,本連載ではブレードサーバーの導入に伴って初めてSANに触れる技術者を想定し,SANの技術解説を行う。第1回である今回は,SANとは何かを説明したうえで,SANでできることをまとめる。
SANって何だろう
SANをひと言で表すと「ストレージを共有するためのネットワーク」である(図1)。
SANが登場するまでは,ホスト(サーバー)とストレージを直接接続する「DAS(Direct Attached Storage)」という構成を利用していた。DASではホスト間でストレージを共有できないので,ホストごとに拡張用ストレージ領域を確保する必要があり,搭載ディスク容量に対して利用率が低くなってしまうという欠点があった。
それに対してSANでは,拡張用のストレージ領域をネットワークで共有できるので,個々のホストごとに拡張用ディスクを考える必要がなくなる。拡張用ディスクは複数ホストで共有できるので,ディスク使用率の最適化が行え,投資を最小限に抑えることが可能だ。
SANはネットワークだと説明したが,そのネットワークで使うプロトコルには主に2種類ある。一つはストレージ接続用に開発された「FC(ファイバ・チャネル)」で,もう一つはLAN環境で使われるIPを生かした「iSCSI」である。前者のSANを「FC-SAN」,後者のSANを「IP-SAN」と呼ぶ。FC-SANとIP-SANの違いは表1の通りである。
FC-SANの特徴 | IP-SANの特徴 |
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ファイバ・チャネル・プロトコルを利用 | TCP/IPの上位層でiSCSIを利用 |
ルーティングやネーム・サービス,アドレス割り当てはハードウエア処理 | ルーティングやネーム・サービス,アドレス割り当てはソフトウエア処理 |
リモート・アクセス不可能なためセキュリティは物理アクセスで制限可能 | リモート・アクセス可能なためセキュリティを別途確保することが必須 |
LANとは別のストレージ・ネットワークを利用(SAN) | LAN環境を用いて構築できるため安価(状況により別ネットワークが必要になる) |
フレームロスが発生しない | フレームロスが発生する |
ブレードサーバーでは多くのサーバーを1台のストレージに接続するので,ストレージには高速性と安定性が重視される。この二つの要件を重視した場合,IP-SANよりFC-SANの方が適しているといえる。
IP-SANの場合,イーサネットとTCP/IPを利用するのでネットワーク機器の価格を抑えることができ,距離を問わず接続できる。しかし,IP-SANではフレームロスが発生するので,ブレードサーバーで要求される高速性や安定性をカバーするには力不足との見方が一般的だ。FCはフレームロスが発生しないプロトコルなので,高速で安定したデータ通信が実現できる。プロトコルについては,連載の3回目で詳しく解説する予定である。