ゴルフダイジェスト・オンラインの大日健・最高執行責任者。IT担当役員を兼務

 「従業員数が300人を超え、会社設立から9年目に入り、世の中のゴルファーに対する責任が大きくなってきた。実現できてないサービス案もたくさんあるし、経営スピードをもっと速くしないといけない。(創業者の石坂信也)社長が言うことに流され過ぎるのもよくない」――。国内最大のゴルフポータルサイト「ゴルフダイジェスト・オンライン」を運営するゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)でCIO(最高情報責任者)を兼務する大日(だいにち)健・最高執行責任者(COO)はこう語る。同社の月間ユニークビジター数は約370万人、登録会員数は約140万人に達している。同社サイト上で2000年5月に始めたゴルフ場予約サービスを使い、実際にゴルフ場でプレーした人数は2009年1月に1000万人を超えた。

 GDOは2008年後半にIT戦略室という部署とIT(情報技術)担当役員のポストを作った。そしてシステム部やマーケティング部、Web企画制作部との連携を推進した。IT戦略室と関係の深い3部署のうち、とりわけマーケティング部の役割は先進的だ。GDOがサイトを介して入手できる情報を様々な角度から詳細に分析し、会社の戦略・戦術の立案や改善に生かす。この役割を外部に委託せずに、自社で徹底することで、経営のスピードと質の向上の両立を図っている。

 マーケティング部が手がける分析の例は、GDOのサイトを訪問した会員の行動と、キャンペーン広告の効果検証だ。どのページとどのページに何分間滞在した会員のうち何%が購買行動を起こしたか、その数値とキャンペーンの相関関係はどうだったのか、などを調べる。

 実は、IT戦略室には2人、システム部とマーケティング部とWeb企画制作部にはそれぞれ1人ずつしか専任の社員がいない。GDOでは多くの業務をプロジェクト形式で実施するため、必要に応じて事業部門から人を兼務で連れてくるためだ。都内にあるGDO本社が固定席のないフリーアドレス形式を採用している理由の1つもこの点にある。組織を常に柔軟に変化しやすくしておく。

 大日COOは、2008年11月にGDO初のIT担当役員になった。同社ではそれまでIT部門の本部長が社長に直接報告していた。「IT部門長は現業のオペレーションを守るのが第1の使命だが、社長は事業のイノベーションを求め、『あれもできるだろう』『これもできるだろう』と言ってくる。経営戦略とITのバランスを考慮して現実解を社長に伝えるポジションとしてCIO職が必要だった」と明かす。

 大日COOは2008年3月にGDOに入社した。前職はニュースサイト「CNET Japan」などを運営するシーネットネットワークスジャパン(東京都千代田区)の代表取締役社長だった。2002年12月に設立されたシーネットの立ち上げに携わった経験を持つ。

 「もうメディア業界に15年くらいいるが、以前のメディアは情報を上流から下流に流すだけだった。その状況をインターネットが変えてきた。『メディア+何か』をやれる会社を成長させて、ビジネスモデルを世界に持っていきたい。ネットを使ったメディア事業と物販事業と予約サービス事業、さらにリアル店舗事業と、全部持っているのは日本にはGDOしかない」

 東証マザーズ上場企業であるGDOの2008年12月期決算は、売上高が128億円で前年比27.2%増、営業利益は6億8600万円で同13.2%増だった。2009年12月期も売上高135億円、営業利益7億2000万円で増収増益の業績予想を出している。

Profile of CIO

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・現在の当社の事業規模だと、大規模なシステムインテグレーターに依頼するのは費用がかかり過ぎるし、小規模な会社にも頼みづらい。ベンダー選びは悩ましい状況にあります。また、自社の技術やソリューションにこだわり過ぎず、「残念ながら当社ではできないのですが、こんなやり方があります」とまで言ってくれるような、フラットな考えを示すパートナーがほしい。そんなベンダーなら長期的に組みたいですね

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・日経産業新聞
・日経MJ

◆仕事に役立つお勧めのインターネットサイト
・ 「CNET Japan」(シーネットネットワークスジャパン)
・ 「ITmedia」(アイティメディア)
・ 「ITpro」(日経BP)

◆ストレス解消法
・もちろんゴルフです(笑)