目覚まし時計に無理やり起こされ、寝ぼけたままスーツに着替えて朝食を取りながら朝刊を読む。いつもとなんら変わらない朝だ。ぼんやり目をやると、一面トップに勤務先が競合他社と経営統合するとのニュースが載っている。

 一気に目が覚めた。慌てて出社すると社内は騒然としている。その日の夕方に社長が記者会見を開き、正式に経営統合を発表した。統合日は1年後。システム部門はそれまでに何をすればいいのだろうか――。

 システム部門の担当者であれば、誰もがこのような突然の出来事に直面する可能性がある。100年に一度と言われる経済危機を迎えた今、生き残りを賭けて経営統合を決断する企業が増えているからだ。事業部門の買収や売却、統合・再編などを急ぐ企業も少なくない。いつ冒頭のようなことが起こっても不思議ではない。

システム統合は最大のハードル

 経営統合や事業再編における最大のハードルはシステム統合だ。商品・サービスや業務プロセス、組織文化を一つにするために、システム部門は重要な使命を担う。異なる組織のシステム部門が力を合わせてプロジェクトをけん引しなければならない。

 システム統合はシステム部門だけでは進められない。両社の利用部門を交え、それぞれの販売・生産・物流・会計・人事といった業務プロセスをひも解くところから取り掛かる必要がある。それから新会社の業務プロセスを決め、現行業務との差異を洗い出し、システムをどう修正するか考える。

 ここで難しいのは、異なる組織の社員が一堂に会して意思疎通を交わすことだ。気心知れた顔なじみの担当者で取り組む従来のシステム開発プロジェクトとは全く異なるコミュニケーションの難しさがある。

 ときにはシステム部門と利用部門だけでは答えが出せない問題も起こる。そうしたときのために、システム部門は経営層とも密接に連携を取る必要がある。

活躍のチャンスでもある

 納期も普段以上に厳しい。たいていの場合、統合日は経営統合の発表時点で決まっている。統合日までに必要な作業をすべて終えなければならない。システム統合が遅れたために経営統合を延期します、というのは許されない。経営統合とは直接関係のないプロジェクトの凍結を決断しなければならない状況も出てくる。

 品質面での要件もシビアだ。システム統合でつまずくと、経営統合そのものが失敗だったというマイナスの印象を社内外に与えかねない。

 見方を変えれば、システム統合はシステム部門が活躍するチャンスでもある。うまくこなせば、業務効率の向上、ITコストの削減、内部統制機能の強化、組織間の文化の融合、ITインフラの刷新といった効果につながるからだ。

あの6000人から学ぶ

 経営統合に伴うシステム統合の方針や進め方は企業によってさまざまだ。この順序で何をどうすれば必ずうまくいくというマニュアルは存在しない。ただし、形は違っても先行事例からある程度は学ぶことはできる。マニュアルがない分だけ、実例を基に経験者から苦労点や工夫点を聞くことが役に立つともいえる。

 そこで日経コンピュータは、三菱東京UFJ銀行のシステム完全統合プロジェクト「Day2」からシステム統合の「正攻法」を学ぶ実践セミナーを開催する。総勢6000人の技術者を率いた現場責任者とチームリーダーに、プロジェクトマネジメントから士気向上策までの実践ノウハウを一挙に公開してもらう。

 6000人の経験を生かさない手はない。システム統合に臨んでいるもしくはこれから着手する企業のシステム部門の方はもちろん、そうでない企業の方も「そのとき」に備えて参加いただければ幸いである。