中国国家統計局が2009年3月に発表した「2008年中国国民経済と社会発展統計公報」によると,昨年の中国からの出国者数は4584万人。このうち,海外旅行など私的な理由による出国者数は4013万人と全体の87.5%を占めており,中国はすでにアジア最大の「海外旅行客供給国」になりました。

 2008年に旅行客数が多かった旅行先は順に,「香港」,「マカオ」,「日本」,「韓国」,「ベトナム」,「米国」,「ロシア」,「シンガポール」,「タイ」,「マレーシア」となります。「香港」と「マカオ」はビザの制限がほとんどないため,行きやすい旅行先となっています。中国人の海外旅行先定番といえば「タイ」と「韓国」だったのですが,「日本」は定番の旅行先を超えて3位につけました。

 なぜ多くの中国人が旅行先として日本を選ぶのでしょう。もちろん地理的な要素も考えられます。しかし,中国人旅行者の日本での行動パターンから見ると,観光しながら質の良いものをまとめて購入できるという理由で日本へ来た方が多いと考えられます。

 日本での旅行中に買い求めた商品の種類を見ると,デジタル商品やブランド品以外に,アジア人の肌質に合う日本化粧品やスキンケア商品が定番の購入商品となっています。また,2008年9月に発覚した中国毒粉ミルク事件の影響で,海外で粉ミルクを買い求める現象が起こり,中国旅行団が訪れた場所で粉ミルクが売り切れるという話が一時期話題になりました。さらに,健康意識を高めてきた中国人にとって,海外でサプリメントの購入も人気となります。

 日本への旅行者数の増加によって,日本特有の商品や業界を中国語で呼びやすいようにさまざまな中国語単語が新しく生まれてきました。例えば「マツモトキヨシ」のようなドラッグストア。もともとドラッグストアと同じ意味を持つ中国語が存在しないため,現在「ドラッグストア」は中国人旅行者の間で「药妆店」という新しい名前で呼ばれています。

 「日本药妆店」(日本ドラッグストア)というキーワードは中国の検索大手Baiduではおおよそ月間3000件の検索があり,Google中国ではおおよそ平均月間2800件の検索があります(2009/04/07に調査)。検索数だけで見ても,日本のドラッグストアに興味を抱いた中国人旅行者,あるいは旅行経験者が多いことがわかります。日本旅行を来る前に購入予定がある商品について,事前にインターネットで調査したり,BBSで質問を投げたりしているユーザーも多く見られます。

 こういった状況の中,日本政府が中国からの旅行客増を見込んで,中国人への旅行ビザ発行条件を緩和し,2009年7月からは中国富裕層の個人旅行を解禁する方針を示しました。訪日する中国人旅行者が今後ますます増えていくことは間違いありません。日本企業のかたは,中国人旅行者を迎える準備ができていますか。

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