P4P(リスティング)広告の世界では,この2~3年の間に多くのツールや機能が誕生し,大きな変化を遂げてきた。自動入札ツールや,LPO(ランディングページ最適化)ツールなどの登場が最たる例である。ほかにも,OvertureやAdwordsの管理画面内の操作によって,タイトル&説明文の最適化検証なども実現可能となった。

 しかし,そこで決して忘れてはならないことがある。それは,検索するのは「人」であり,「機械」ではないということだ。すなわち,どんなに高性能なツールであっても,検索する「人」にとって何が最適なのかを調査・検証できなくては利用する価値がない。

 P4Pの運用・管理をする側(広告主・代理店)が常に意識していなければならない課題は,検索ユーザー心理にマッチした訴求,つまりタイトル&説明文やランディングページの最適化ということである。この課題について,費用対効果が厳しく見られる時代であるからこそ,改めて立ち返ってみたい。

 タイトル&説明文にフォーカスして考えると,クリック率を上げることだけに注力して文章を推敲している傾向がある。現在のOverture・Adwordsの順位決定の仕組みを考えれば,ある程度仕方がないことなのかもしれないが,それは本当に正しいことなのであろうか。

 極論ではあるが例えば,中古車販売を手がけている企業が,「今クリックしたら全部タダです」や,「先着100名に,100万円プレゼント」という広告文を出せば,クリック率は非常に高くなるだろう(もちろん,実験できるものではないので,あくまで推測の域を超えないが)。しかし,ランディングページにそうした記載が無ければ,高クリック率が中古車販売に結びつくとは考えにくい。

 人材派遣会社の場合には,新規の派遣スタッフの登録・応募を狙ってP4P出稿をすることが多い。現在の不況下では職を探す人が多く,登録・応募数が一昨年に比べて急増している状況にある。しかしその一方で,登録・応募をしてきたスタッフの対応に手が回らなくなったり,スキルや経験を持ったスタッフが少なくて企業側の受け皿が少なかったりする状況も生まれているようである(筆者が得ているのが断片的な情報である可能性もあり,必ずしも各社に当てはまるとは限らないが)。

 こういった状況を考えると,一概に「コンバージョン率が高い」ということが本当に成果と言えるのだろうか,という考えに到達する。仮に数が少なくとも,本当に求めている人材を獲得できる方が成功と言えるのではないだろうか。