日本の携帯電話市場において、これからのモバイルアプリケーションの可能性を示す話題の一つが、“スマートフォン”の出現だ。米アップルのiPhoneや米グーグルのAndroidの登場により、アプリケーションの多様化が期待されている。日本のスマートフォンの多くはWindows MobileOSを採用している。
スマートフォンとは、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)の定義によれば、「仕様が公開された汎用的なOSを搭載し、利用者が自由にアプリケーションを追加して機能拡張やカスタマイズができる携帯電話およびPHS」のことである。
これまでスマートフォンは、大きな表示画面やタッチパネル、パソコンと同じQWERTY配列のキーボードなど、一般的な携帯電話が持たない外観上の特徴によって、その存在価値が語られてきた。
それも最近は、一般的な携帯電話でもタッチパネル機能付きの大型液晶やフルキーボードを持つ機種が登場し、それらはスマートフォン固有の特徴ではなくなってきた。スマートフォンが持つ最大の特徴は、通信事業者からの情報開示なしに、「利用者が自由にアプリケーションを追加し、機能拡張やカスタマイズができる」ことである。
年率27%成長を支える活用事例
スマートフォンの活用事例として、広島市に本社を置くヤマサキを紹介しよう。同社は、海藻や海泥を配合したヘアケア商品「La Sana(ラサーナ)」シリーズでヒットを飛ばしている化粧品の製造・販売会社である。この5年間、年率27%増で成長を続け、2008年2月期の売上高は34億円を超えた。
山崎宏忠社長が、「地方の無名で小さな化粧品会社が、やっと全国で戦えるようになった」という同社の武器は、口コミ。年間3000万個を超える試供品を配布しながら、利用者の声を拾うことで、顧客ニーズに応える。
広島の開発拠点と全国の顧客をつなぐのが、コールセンターと、スマートフォンを活用した営業支援システムだ。後者が、同社商品を取り扱うドラッグストアなど全国に9000カ所近い店舗のすべてを、30人弱の営業担当者が訪問することを可能にしている(図1)。
ヤマサキは当初、店舗巡回記録を紙ベースの日報やメールによる報告で管理していた。その後、営業担当者にノートパソコンを配布し、店頭でのヒアリング結果の入力や、店頭の陳列状況を撮影した写真データを送信できる仕組み「SAMS」を開発した。
しかし、店舗でノートパソコンを取り出し、情報入力することは難しい。営業担当者は結局、現場では紙にメモをとり、会社や出張先のホテルに戻ってから、改めてパソコンにデータを入力し、送信するのが現実だった。