コスト削減の一環で、従業員の出張経費を見直すユーザー企業も多いことだろう。だからといって、単純に出張を減らしてしまうと、取引先との関係や、現場の意思疎通などの面で支障をきたしてしまう。

 こうした課題を解決する方策として、ビデオ会議システムを提案する手がある。不況の今こそ、市場拡大の時期だ。

 実際に大塚商会では、調剤薬局や流通といったフランチャイズチェーンで、ビデオ会議システムの受注案件が増えているという。「本部の従業員が現場に出向かず、店舗責任者と情報を共有したり、経営指導するためのツールとして活用している」。大塚商会の村田守ODSプロモーション部次長は述べる。

1拠点4000万円の製品も売れる

図6●ビデオ会議システムの利用風景
図6●ビデオ会議システムの利用風景
シスコシステムズの高機能型機「Cisco TelePresence 3000」の場合。カメラと3面のハイビジョンディスプレイを備える。1拠点当たりの価格は約4000万円

 ビデオ会議システムは、高機能型と普及型の大きく二つに分けることができる。高機能型の一例は、企業経営者が利用することを想定したシスコシステムズの「Cisco TelePresence 3000」である(図6)。

 「机をはさんで議論しているかのような臨場感が得られる。既に、経営会議に活用している国内のユーザー企業もある」。同製品を昨夏から販売し始めた日本IBMの繁沢優香ITS事業サービスプロダクト企画事業部長は話す。

 とはいえCisco TelePresence 3000の1拠点当たりの導入費用は、約4000万円。決して安いとは言えない。高機能型のビデオ会議システムを売り込むポイントは、経営幹部が海外出張する頻度である。「多くの海外拠点を抱えるグローバル企業なら、出張費を大幅に削減できる」とIBMの繁沢事業部長はアピールする。

 「米国出張の場合、1人1回で50万円以上かかることが多い」(IBMの繁沢事業部長)。ここでは経営層や管理職が年60回、平均50万円の経費で米国出張したとすると、3000万円のコストがかかる。

 極端な例だが、高機能型ビデオ会議システムを国内本社と米国支社の2拠点に導入して、これらの海外出張をすべてやめたとしよう。すると、ビデオ会議システムのリース料金と、一般的な回線費用などを合算しても、年間経費は2133万円になる。22%以上のコスト削減が可能だ(図7)。

図7●ビデオ会議システムによるコスト削減の提案例
図7●ビデオ会議システムによるコスト削減の提案例
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 経営層や管理職以上が海外出張することの多いグローバル企業は、「国内に200社以上ある」と繁沢事業部長は言う。ソリューションプロバイダの営業担当者は、こうした企業を探し出して、積極的にアプローチすることで、不況を乗り切ることができるかもしれない。

リスク管理の強化にも効果がある

 一方、普及型の製品は「リースやレンタルなら、1拠点当たり月額3万円から製品を導入できる」(大塚商会の村田次長)と言う。普及型の製品を手掛けているのは、国内のビデオ会議システム市場で首位を争っているポリコムジャパンとソニーである。

 普及型製品よりも低価格な製品もある。パソコンを活用したWeb会議システムがそうだ。NTTアイティやエイネットなどが製品やサービスを提供している。

 大阪に本社を構えるSIerのエフ・シー・エスも、Web会議システム用ソフト「Flexible Cost Saver」を出荷済みである。こちらはユーザー数に応じて課金するサービスモデルを採用し、1ユーザーの月額料金は約2000~6000円と幅がある。

 普及型機を用いれば、東京と大阪に拠点を持つユーザー企業で、大幅なコストカットを実現できると提案できそうだ。東京-大阪間の国内出張にかかる毎月のコストは、往復の交通費や日当、宿泊費を合算して、183万5000円だ。詳細は図7下に示した通りである。この出張を全廃して、ビデオ会議システムで代替すれば、わずか月額50万円で済みそうだ。

 ビデオ会議システムは、コスト削減のほかにも、副次的な導入効果がある。「頻発するテロ事件のせいか、リスク管理を強化するためにビデオ会議システムを検討するユーザー企業も出てきた」。大塚商会の村田次長は語る。