「100年に一度の津波」といれわる大型の不況の到来が、IT商談の現場を一変させている。「昨年の秋以降、検討していた新規開発案件を凍結したり、ゼロから見直したりするユーザー企業が急増した」。ソリューションプロバイダの営業部長や現場の営業担当者の多くが、こうため息をつく。

 IDCジャパンが国内企業327社を対象に2008年11月中旬に実施した調査でも、情報システム部門の責任者の51%が「2009年度のIT投資を減らす」と答えている。「増やす」と回答した責任者は3%である。2009年のITサービス業界は、厳しい逆風の中でIT商談に挑むことを余儀なくされそうだ。

 だが、光明はある。それは「コスト削減ソリューション」だ。「コスト削減の話題になると、顧客が身を乗り出してくる」。日本IBMの繁沢優香ITS事業サービスプロダクト企画事業部長はこう話す。「コストカットに直結しそうな製品やサービスの引き合いが、着実に増えている」。ほかにも、こう述べるソリューションプロバイダの営業担当者は多い。

 コスト削減ソリューションは、業種業態を問わず顧客に訴求する。ソリューションプロバイダにとっては、新規顧客を開拓するためのドアノック商材にもなる。

 顧客のコスト削減に確実に貢献するソリューションは何か。本特集では、「印刷代」「サーバー費用」「出張経費」を絞る商材に迫った。

 まずは印刷関連費用の削減ソリューション。「1年以内に印刷代やトナー代などを○円削減します」。こう顧客に約束できるソリューションから見ていく。

頭を抱えるユーザー企業

 「なるべく白黒で両面印刷することを心掛けよう」。多くの企業が、印刷物に関連するコストを削減しようと動き始めている。だが「従業員に指示するだけでは、なかなか印刷関連コストを減らせない」。頭を抱えているユーザー企業の担当者が多いのも事実である。

 ここに商機がある。印刷関連コストを削減できるソリューションは三つある(図1)。具体的には「プリンターやコピー機、ファクシミリを集約し台数を減らす」「印刷方法を管理してトナー/紙代を削減する」「専用ソフトでトナー消費量を抑制する」、である。

図1●オフィスの印刷関連コストを削減するための提案の例
図1●オフィスの印刷関連コストを削減するための提案の例
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 「稼働率の低いプリンターやファクシミリを撤去し台数を減らせば、機器の保守費を削れる。ユーザー企業が不便さを感じずに保守費を2割以上削れることもある」。富士ゼロックスの稲葉直彦営業計画部アクセラ推進グループ長は言う。一般的に、ファクシミリの保守費用は年間5000~1万円。仮に100台撤廃すれば、年間50万円以上のコストが浮く。

 プリンターやコピー機などを統合する手段としては、複合機を提案するのが一般的だが、これだけではない。ソリューションプロバイダは、印刷機器向けの運用管理ソフトを追加で提案できる。「運用管理ソフトを導入することで、印刷機器の稼働状況や、ユーザー個別の利用状況を見える化し、ユーザー企業は印刷関連コストを最適化できる」(NECソフト新潟支社の羽部康博営業グループセールスマネージャー)。

トナー代を節約するためのソフトも

 運用管理ソフトは、紙代の節約にも貢献する商材だ。代表的なものは、NECソフトの「プリント監視官」や富士通の「Interstage Print Manager」などである。ほとんどが、印刷制御機能を備えており、エンドユーザーが出力する印刷物を管理できる。

 エンドユーザーに対して強制的に、複数ページの文書を1ページに「集約印刷」させたり、両面印刷させたりできる。ここでは、エンドユーザーの役割や役職に応じて設定を変えることも可能だ。

 さらに、トナー/紙代の削減ソリューション向けの商材として注目を浴びつつあるのが、プリンター向けの「トナー節約ソフト」である。これを使えば、プリンターのトナーの消費量を調整することができる。

 図2を見てほしい。トナー消費量を50%に設定した場合と通常とでは確かに差があるが、ユーザー企業はそれほど、気にしないことが多いという。「最初に50%の出力結果を見せると、『大半の文書は、この程度の品質でも業務に支障は出ない』と言うユーザー企業が多い」。イスラエルのプレトン製のトナー節約ソフト「PretonSaver」を販売しているシーティーシー・エスピーの渡辺裕介企画本部営業推進部部長は述べる。

図2●トナー節約ソフトを使って出力した印刷物
図2●トナー節約ソフトを使って出力した印刷物
写真はスプライン・ネットワーク「TonerSaver」を使ったケース