世界的な不況の影響は,世界の端末市場に深刻な影を落とし始めている。調査会社の米IDCによると,携帯電話の出荷台数は2008年の第3四半期以降,対前年同期比の伸び率が鈍化を始め,第4四半期にはついにマイナス成長に突入(図1上)。IDCは2009年の世界の端末出荷台数はさらに厳しい状況になると予想する。

図1●世界の携帯電話端末市場は曲がり角に差し掛かっている
図1●世界の携帯電話端末市場は曲がり角に差し掛かっている
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 端末ベンダーも厳しい見方をしている。世界最大の端末ベンダーであるフィンランドのノキアは,2009年1月に発表した第4四半期決算で,2009年は世界の端末出荷台数は前年比1割減になると予測。これまで同社の成長を支えてきた新興国市場での端末出荷台数の伸びが急減速していることが,厳しい予測の背景にある(図1下)。

 そんな状況下で開催された今年のMWCは,例年に比べて発表する新端末の台数を抑えるベンダーが相次いだ。米モトローラに至っては新端末の発表すらなかった。

エコシステム加速でサービスの広がりを

 ただこうした不況下の新しい動きとして,端末を中心にサービスの広がりを加速させるような「エコシステム作り」が目立ってきた。

 携帯端末向けのサービスは目まぐるしい速さで進歩している。特に携帯電話が高機能になるほど,サービスを端末固有の機能として作り込むことが非効率になりつつあり,適切なタイミングで市場に製品を投入できない原因にもなっている。そこで端末ベンダーや携帯電話事業者は,開発の効率性とスピードを確保するために,オープンな端末プラットフォームを用意して外部の開発者の参加を促し,多様なアプリケーションを生み出す方向へ舵を切りつつある。

 例えばノキアを中心に様々な事業者やベンダーが参加するSymbian Foundationや,携帯電話事業者や端末ベンダーが参加して携帯電話向けLinuxの普及を目指すLiMo Foundation,米グーグルが主導するLinuxをベースにした端末プラットフォーム「Android」,米マイクロソフトが推進する端末プラットフォーム「Windows Mobile」,米アップルの「iPhone OS」などが主な端末プラットフォームの陣営だ。それぞれの陣営の主導権争いが,いよいよ本格化している。