端末プラットフォーム競争が本格化する中で,“ガラパゴス諸島”にも例えられる日本の端末ベンダーにも転機が訪れている。LiMoやSymbianなど世界共通の端末プラットフォームの採用に加え,通信機能も世界標準のW-CDMAやGSMを装備するようになり,日本の端末をそのまま国際展開できる下地が整ってきたからだ。

 多くの日本の端末ベンダーは,海外展開から一度撤退した状況だが,再び海外市場へとビジネスを広げる動きが見えてきた。

富士通は台湾へ展開

 富士通は1月,NTTドコモと共同で,アジア市場向けに既存のFOMA端末を多国語対応させるソフトを共同開発した。このソフトを活用し,台湾の携帯電話事業者であるファーイーストーン・テレコミュニケーションズ(FET)向けに,中文繁体字の表示・入力に対応した同社製端末「FOMA F905i」を1月から納入し始めた。

 富士通はかつて,北米地域で携帯端末事業を展開していたこともあるが一度撤退。今回が海外への本格的な再参入となる。

 同社の佐相秀幸経営執行役モバイルフォン事業本部長は,「日本の端末を海外に広げる障壁はかつてと比べて相当低くなった。台湾FETはiモード・サービスを展開しており,日本の端末との親和性が高い。さらにアジアの富裕層の間では日本製端末が人気を得ている。日本の端末が受け入れられる市場があるため,ビジネス・エリアを広げた」と説明。大きなビジネス上の決断をしたわけではなく,ごく自然に環境の変化の中で海外再参入に至った経緯を語る。

 同社では今回のケースを基に,海外での端末展開のベースを再構築。LTEが世界で普及し始めるころを本格的な海外展開のチャンスととらえ,同社の基地局ビジネスと共に端末ビジネスも世界へ広げる考えだ。

環境の変化に勝機あり

 海外から一度撤退したNECも,海外市場に再参入する意志を示す。同社の田村義晴モバイルターミナルプロダクト開発事業本部長は,今回のMWCの内容を振り返り,「単に端末の魅力だけで訴える時代は終わった。ネットワーク・サービスと組み合わせ,ビジネスの広がりを見せることが今後のトレンドとなる。パソコンやネットワーク,サービス事業も持つNECが力を出せる分野だ」と自信を示す。

 田村本部長は,「これまでにない新機軸端末を,今後1年くらいの間に国内外に示していきたい」と海外再参入への決意を述べる。

 同社は厳しさを増す国内市場で生き残るため,端末開発の効率化にも取り組んでいる。2008年上半期から,ベースとなるモデルを開発し,そこから派生機種を生産する方法を取ることで,従来と比べて開発コストを平均で4割近く抑えられるようになったという。

世界端末を日本対応に

 日本の端末が海外に出やすくなるということは,海外端末が日本市場に入りやすくなることも意味する。

 グローバルな端末ベンダーであるソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズも,これまでのように日本市場向けに海外とは別の専用端末を用意するのではなく,「グローバル展開している端末に日本で求められる要件を付加するような形に変えていきたい」(同社日本法人の木戸良朗代表取締役社長)と語る。