モバイル導入の狙いは、これまでの業務の効率化中心から、競争力強化に直接的につながる目的へと大きく変わりつつある。競争力強化の3大テーマは、マーケティングの強化、物流・現地工事の差異化、顧客サービスの向上、だ。中堅・中小企業などIT導入率が低いほうが、モバイルの導入機会は高い。

MC2.0化が必要な業務は多種多様

 MC2.0の適用が待たれる業務は幅広い。図1は、中小企業庁による、企業規模別、業務別のIT導入状況の調査結果である。主に、大型コンピュータやオフコン、パソコンを使ったシステムの統計だ。IT導入率の低い分野ほど、MC 2.0の導入機会は高いと考えられる。もちろん、IT化が進んでいる人事・給与、財務・会計といった業務においても、MC2.0によるスピードアップ効果が期待できる。

図1●既存ITの導入状況<br>未導入領域ほど、MC2.0の導入機会が大きいと考えられる
図1●既存ITの導入状況
未導入領域ほど、MC2.0の導入機会が大きいと考えられる
[画像のクリックで拡大表示]

(1)物流システム:GPSや無線通信など、MC2.0ならではのビッグチャンスがある。例えば、配達システムにGPSやBluetoothを導入すれば、配送効率を大幅に高められるだろう。

(2)開発・設計業務:携帯電話を用いたテレビ会議により、顧客と営業担当者および設計・製造現場の設計者による三者会議などに適用できる。商品企画部門や、設計開発部門の担当者が、現地、現場、現物の“三現主義”によりマーケティング活動を行う例では、携帯電話のカメラ機能が有効だ。

(3)生産業務:生産計画系では、本社、工場、営業、さらには海外現地法人との間でのテレビ会議が利用できる。生産指示系では、計画部門と製造部門の間で構内モード対応の携帯電話を使えば、リアルタイムのコミュニケーションが図れる。製造業務では、QRコードを利用したPOP(生産時点情報管理)システムにより、工程進捗や工数情報を収集し、工程の整流化や能率向上、コスト削減に役立てられる。

(4)在庫管理業務:バーコードやQRコードを利用した在庫管理システムを構築すれば、在庫検索や実地棚卸時間のスピードアップと精度向上が図れる。特に営業最前線からの在庫問い合わせ業務においては、1台の携帯電話で「音声通話→QRコード検索→結果送信」といった一連の作業をリアルタイムに実行できる。

(5)購買・仕入れ業務:各種金属やプラスチック原材料の目まぐるしい相場変動に対して、最も有利な条件で取引するためには、鮮度の高い情報がなにより重要である。MC2.0により携帯電話をフルに活用すれば、市況と自社需要予測と現在在庫量を取引現場で確認でき、素早い意思決定につなげられる。

(6)社内の情報共有:MC2.0によるグループウエア活用により、各人の現在のプレゼンス(居場所、業務中かどうか、空いている時間といった状態)を自動的に把握し共有化できる仕組みを構築できる。基幹システムと連携させれば、開発、生産、販売など企業の生命線となる情報をリアルタイムに把握できるようになる。

(7)販売業務:すでに適用例が多く、かつ効果が表れているのがEC(電子商取引)だ。携帯電話にQRコードを送信し、チケット代わりにしたり、Webと連携して通信販売したりする例もある。

 マーケティング分野への適用例も多い。街頭での市場調査、携帯電話をポイントカード代わりに使う会員制度などだ。ユニークなところでは、携帯電話をスタンプ代わりにしたウォークラリーや、携帯電話をTVカメラとして使用するライブ放送もある。