日本における携帯電話を中心としたモバイルアプリケーションの業務利用は急拡大していない。その理由の一つに、IT技術者が携帯電話の能力を過小評価していることがある。業務系アプリケーションに強いIT技術者が、モバイルを使いこなしのためのスキルを身に付ければ、企業システム像は大きく変わるはずだ。

 世界同時金融危機が象徴するように、経営環境は大きく変化している。同様に、種々のテクノロジが集積する携帯電話が急速に進化していることにも異論はないだろう。例えば、携帯電話に搭載されているプロセサの代表例の一つであるSHシリーズ(ルネサス テクノロジ製)の計算能力は、この10年間に16倍にまで向上した。メモリー容量の拡大やセキュリティの強化、ブラウザやアプリケーションの機能向上などには目を見張るものがある。

 にもかかわらず、日本における携帯電話を中心としたモバイルアプリケーションの業務利用は急拡大していない。その理由としては、(1)携帯電話が業務用機器として認識されていない、(2)IT技術者が携帯電話の能力を過小評価している、などが指摘できる。特に、業務系アプリケーションに強い従来のITプロフェッショナルが、モバイルの“真の力”をつかみ切れていないことが課題である。

 (1)については、電子ゲーム世代の人材が各社の中核を構成するにつれ、解消されつつある。それだけに、業務系アプリケーションに強いIT技術者が、モバイルの力量を知り、使いこなしのためのツボを身に付ければ、企業のシステム像は大きく変わるはずだ。

MC2.0が企業の“救世主”になる

 実際、性能向上した携帯電話を中心に、モバイルの世界では新たな潮流が起こりつつある。

 モバイルの第1ステージは、ノートパソコンとモデムや通信カードを組み合わせた仕組みだった。メールやスケジュールの管理が主な業務用途だった。これに対し、現在進行中のモバイルは第2ステージにある。

 モバイルの第2ステージは、次のように定義できる。

  • 端末は携帯電話が中心
  • 情報交換はインターネットを使う
  • 顧客や現場の生情報を直接デジタルで収集する
  • 情報は意思決定者に素早く伝達する
  • 決定された意思が、顧客や現場に素早く伝達され、即アクションにつながる

 すなわち、業務の「極限までのスピードアップを目指した構造変革」を推進することが、モバイルの第2ステージなのだ。これを、「MC(モバイルコンピ ューティング)2.0」と呼ぼう。MC2.0で企業が目指すのは、経営環境変化にリアルタイムに追従できる「リアルタイムベースカンパニー」の実現である。

 企業は時々刻々と経営の意思決定を行っている。それには、鮮度が高く正確な情報が必要だ。意思決定者は、その情報を糸口に、多様な支援情報にアクセスして意思決定する。その結果が関連組織に即座に伝達され具体的な経営アクションへとつながっていく。